[P3-3-03] マスト細胞の活性化に低酸素環境が及ぼす影響の解析
キーワード:マスト細胞、hypoxia、サイトカイン
マスト細胞は本来、寄生虫感染において中心的な役割を果たしている細胞であり、またアレルギー喘息においても重要であることが分かっている。近年では、それらに加えて細菌感染に対する生体防御機構においても重要な役割を果たすことが明らかにされてきた。また、マスト細胞の体内での分布は幅広く、気道粘膜、皮膚、腸管粘膜といった外界と接する場だけではなく、骨の特に皮質骨内に多く存在することも知られている。我々はこれまで、マスト細胞がLPS刺激を受け各種サイトカインを分泌する過程において重要なシグナル伝達経路について報告してきたが、実際の体内では炎症局所においては極度の低酸素環境(hypoxia)(1~2% O2)にさらされていることを鑑み、今回、LPSによるマスト細胞活性化に対してhypoxiaが与える影響について解析を行った。まずはマスト細胞株であるMC/9を2% O2環境下におき、hypoxia誘導性分子であるHIFのタンパク量の経時的変化を確認したところ、MC/9内のHIF1αはhypoxia移行の1~2時間後から、HIF2は6時間後からそれぞれ増加することが確認された。次に、MC/9を一晩hypoxiaにおいたのちLPSにて刺激を行い、各種サイトカインの発現をリアルタイムPCRで検出した。興味深いことに、骨吸収を阻害するという報告があるIL-13の発現は、短期的にはhypoxiaにより増強されることが確認された。また、破骨細胞分化を抑制する報告があるIL-33の発現はLPS刺激から4時間後では差がみられなかったが、3日後には増強がみられた。それに対して、炎症性サイトカインであるTNF-αの発現量はhypoxiaにより減少傾向がみられた。これらのことから、マスト細胞においてLPSにより誘導されるサイトカイン産生が酸素環境によりサイトカイン選択的な影響を受ける可能性が示唆された。