第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月18日(月) 08:30 〜 15:50 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P3-3-10] 発生工学的トレーシングにより可視化限定された扁桃体ニューロンの味覚嫌悪学習獲得時と消去学習後における味覚条件刺激への応答

〇杉田 誠1 (1. 広大 院医 口腔生理)

キーワード:味覚、ニューロン、味覚嫌悪学習

マウスでは生得的に甘味刺激に嗜好性反応を示し、苦味刺激に嫌悪性反応を示す。一方で、生得的に嗜好性を示す甘いサッカリン溶液(味覚条件刺激)を初めて摂取した後に、内臓不快感を誘発する塩化リチウムを腹腔内投与(無条件刺激)された際には、味覚嫌悪学習を獲得し、学習後にはサッカリン溶液に嫌悪性反応を呈する。扁桃体基底外側核のCREB強発現ニューロンにおける条件刺激と無条件刺激の情報の統合が、味覚嫌悪学習の獲得に必要であることが示唆されているが、この情報統合ニューロンを中心とする神経回路活動において、いかなる可塑性変化が起こり、嫌悪学習を可能にするかには不明な点が多い。本研究では、嫌悪性の苦味を受容する味細胞に選択的に経ニューロン性トレーサー(WGA-DsRed)を発現するトランスジェニックマウスを用い、苦味受容味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取る扁桃体内の苦味経路ニューロンの局在を蛍光検出し、可視化された苦味経路ニューロンについて、味覚嫌悪学習の獲得前後および消去学習後で、味覚条件刺激への応答性に変化が生じるかを、最初期遺伝子Zif268の発現を免疫組織化学的に検出することにより探究した。WGA-DsRedにより標識される苦味経路ニューロンは扁桃体内で内側核に多く観察された。扁桃体内側核を前方背側、前方腹側、後方背側、後方腹側の4区画に分けた際、前方背側、前方腹側、後方背側の苦味経路ニューロンにおいては、味覚嫌悪学習獲得前に比較し学習獲得後に、味覚条件刺激(甘味刺激)で活性化されるニューロンの割合が顕著に増加することが明らかとなった。これらの扁桃体内側核領域において観察される、味覚条件刺激で活性化される苦味経路ニューロン数の増加は消去学習後にも残存した。共同研究者:Chieh-Mei Chang(広大・院医・口腔生理)