[P3-3-13] 味蕾内シナプス欠損マウスの機能解析
キーワード:味覚、シナプス、酸味
味覚は口腔内の化学物質を検知する感覚である。その受容細胞である味細胞は舌、口蓋、咽頭部の味蕾内に存在し、各味細胞は味情報を味神経線維へと伝達する。一部の味細胞は神経線維と形態的にシナプスを形成することが示されているが、近年の研究により甘味、うま味、苦味、塩味の受容細胞から神経線維への情報伝達は古典的シナプスとは異なる「チャネルシナプス」と呼ばれる機構を介し行われることが示されている。すなわち、味蕾内のシナプスは5基本味のうち4基本味の情報伝達には関与しないと考えられるが、味蕾内シナプスの意義・役割については未だ不明である。本研究では、味蕾内に存在する古典的シナプスに着目し、その機能・役割について解析した。味蕾内シナプスを欠損させるため、keratin 5-CreマウスとSNAP25-floxマウスを掛け合わせ、SNAP-25の味蕾内での発現を免疫組織化学的手法により調べたところ、コントロールマウスではSNAP25の発現がIII型細胞に見られたが、SNAP25-cKOマウスではその発現は認められなかった。I型、II型細胞マーカーであるENTPD2、gustducinの味蕾内での発現は両マウス間で差は見られなかった。また、SNAP25-cKOマウス味蕾内でのIII型細胞の数が有意に減少していた。短時間リック試験により各種味溶液に対する行動応答を解析したところ、SNAP25-cKOマウスはコントロールマウスと比較し、酸味刺激に対する忌避応答が若干減弱する傾向がみられたが、他の基本味刺激に対する行動応答に変化が生じなかった。以上の結果から、味蕾内シナプスは味細胞からの酸味情報伝達に寄与するが他の基本味の情報伝達には関与しない可能性が示唆される。