第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

日本学術会議シンポジウム(市民公開講座)

「臓器再生最前線〜ミニ臓器の作製から応用まで〜」

2023年9月16日(土) 17:30 〜 19:00 A会場 (百周年講堂(本館7F))

座長:美島 健二(昭大 歯 口腔病理)、樋田 京子(北大 院歯 血管生物分子病理)

17:52 〜 18:14

[SCJS-02] ヒト多能性幹細胞を用いた骨発生プロセスの再現とその応用

〇大庭 伸介1 (1. 阪大 院歯 組織発生)

キーワード:多能性幹細胞、骨、軟骨

Waddington博士のエピジェネティックランドスケープモデルに示されるように、個体発生における細胞運命決定の根幹は遺伝子発現・エピゲノムであると考えられる。我々は骨格発生プログラムの理解を目指して、骨格系細胞を規定する遺伝子制御ネットワークを明らかにしようと研究を進めてきた。これまでに、マウス骨格系細胞におけるゲノムワイド解析と並行して、ヒトの骨格発生過程の理解を目指し、ヒト多能性幹細胞(human pluripotent stem cell: hPSC)を用いた骨格発生過程のモデリングにも取り組んできた(Kanke K et al. Stem Cell Reports, 2014; Zujur D et al. Sci Adv, 2017)。最近、hPSCから発生過程を模倣しながら軟骨内骨化を再現する手法を開発した(Tani S et al. Cell Rep, 2023)。本法では、hPSCから沿軸中胚葉~体節を経由して誘導した椎板細胞を免疫不全マウス腎被膜下に移植することで、胎児期の軟骨内骨化を模倣した構造体を再現する。シングルセルRNAシークエンスの結果、hPSC由来軟骨内骨化構造体はヒト由来の骨格系細胞とマウス由来の血管・血球系細胞で構成されることが明らかとなった。また、細胞遷移解析において、骨軟骨前駆細胞から骨軟骨へ分化する系譜が示された。さらに、クロマチンアクセシビリティと遺伝子発現を単一細胞単位で同時に解析可能な単一細胞多層解析をhPSC由来軟骨内骨化構造体に対して行い、ヒト骨格発生におけるGRNの予測を行った。以上より、本法はヒト骨組織の発生過程や病態の再現・理解に貢献するものと考えられた。