第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

アップデートシンポジウム10

「異分野融合研究による歯科イノベーションへの挑戦」

2023年9月18日(月) 08:30 〜 10:00 C会場 (133講義室(本館3F))

座長:松下 祐樹(長大 院医歯薬 細胞生物)、Hara Satoshi Emilio(岡大 院医歯薬 歯先端研セ)

08:54 〜 09:06

[US10-03] 骨の形成、再生、がんを制御する幹細胞を探し求めて

〇松下 祐樹1 (1. 長大 院医歯薬 細胞生物)

キーワード:骨格幹細胞、骨再生、骨肉腫

骨の成長や再生には骨格幹細胞が大きな役割を果たしていると以前から考えられてきたものの、これまでに生後、特に小児、成長期における、骨髄の骨格幹細胞の存在は明らかになっていなかった。今回われわれは、骨髄における新たな骨格幹細胞を発見し、骨の形成、再生に強く貢献することを明らかにした。本研究ではまず、全ての骨格系細胞を標識する、生後21日齢のPrrx1-cre; R26RtdTomatoマウス大腿骨からtdTomato陽性細胞をソーティングし、シングルセルRNA-seq解析を行い、全骨格系細胞の多様性を明らかにし、さらに骨格幹細胞の集団を予測し、同細胞集団にはFgfr3が強く発現していることを見出した。次にFgfr3-creER; R26RtdTomatoマウスを用いて、Fgfr3陽性細胞の局在を組織学的に観察したところ、骨芽細胞とも骨髄間質細網細胞とも異なり、骨内膜に存在していることが分かった。Fgfr3陽性細胞の系譜追跡を行ったところ、多くの骨芽細胞や骨髄間質細網細胞に分化しており、さらにFgfr3陽性細胞を初代培養し、免疫不全マウスに移植したところ、自己複製能、軟骨、骨、脂肪細胞への多分化能を併せ持つ、骨格幹細胞細胞であることが明らかとなり、骨内膜幹細胞(E-SSCs: Endosteal-Skeletal Stem Cells)と名づけた。 骨内膜幹細胞特異的にp53を欠失させたところ、p53欠失骨内膜幹細胞(Δp53-E-SSCs)が異常増殖することにより巨大な骨肉腫が形成され、さらにΔp53-E-SSCsを免疫不全マウス骨髄に移植したところ、骨肉腫が形成された。このことから骨髄の新たな幹細胞である骨内膜幹細胞は骨形成、再生に関与すると同時に、骨肉腫発生の起源となることが示唆された。