第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

アップデートシンポジウム10

「異分野融合研究による歯科イノベーションへの挑戦」

2023年9月18日(月) 08:30 〜 10:00 C会場 (133講義室(本館3F))

座長:松下 祐樹(長大 院医歯薬 細胞生物)、Hara Satoshi Emilio(岡大 院医歯薬 歯先端研セ)

09:18 〜 09:30

[US10-05] エネルギー代謝から紐解く疾患生物学 ~糖鎖の生合成と分解に着目した新たなアプローチ ~

〇犬伏 俊博1 (1. 阪大 院歯 矯正)

キーワード:エネルギー代謝、ヒアルロン酸、細胞外基質

我々の体を構成する細胞は、栄養飢餓状態や低酸素などの外的および内的な変動に応じて、エネルギー代謝機能の転換(代謝リプログラミング)により、細胞の増殖や生存を適切に制御しています。しかし、炎症組織ではこの代謝リプログラミングにより細胞が特殊な環境に適応し、組織の不可逆的な変化が引き起こされ、機能障害・治癒不全が生じることが知られています。さらに、悪性度の高い癌では、代謝リプログラミングにより、“Stemness”を維持していると考えられています。これらの背景から、代謝リプログラミングを制御することが、新たな難治性疾患の治療標的として注目されています。私たちはこれまでに、世界に先駆けて新規細胞外ヒアルロン酸分解酵素Tmem2を見出し、ヒアルロン酸を積極的に分解する新たな機構が存在することを示しました。ヒアルロン酸は2糖の繰り返し構造からなり、生合成は解糖系といわれるエネルギー代謝と密接に関係しています。本研究では、エネルギー代謝という新たな視点から、ヒト疾患におけるヒアルロン酸の合成・分解機構の異常を明確にし、疾患特異的にヒアルロン酸の合成・分解異常を制御することで、これら疾患を根本的に治療する革新的治療法の開発を目指します。本研究は、生命科学の根源の理解につながり、またヒト難治性疾患の理解や新たな診断・治療体系の提案につながる破壊的イノベーションを引き起こすことが期待されます。