第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

アップデートシンポジウム6

「唾液腺の機能維持を巡る障害と再生の拮抗」

2023年9月17日(日) 14:20 〜 15:50 C会場 (133講義室(本館3F))

座長:天野 修(明海大 歯 組織)、吉垣 純子(日大松戸歯 生理)

14:20 〜 14:40

[US6-01] 放射線照射に伴う唾液腺の機能障害に関する検討

〇内田 仁司1 (1. 富山大 医 分子医科薬理)

キーワード:唾液腺、放射線障害、口腔乾燥症

世界では毎年数十万人の患者が新たに頭頸部腫瘍と診断され、放射線療法、化学療法、外科手術を組み合わせた複合的な治療を受けている。放射線照射は正常な組織にも影響を生じ、多くの場合で副作用が現れる。頭頸部腫瘍に対する放射線療法では、唾液腺細胞の恒久的な消失を伴う口腔乾燥症が高頻度に生じることが知られている。しかしながら、この口腔乾燥症に対する根本的な治療法は存在せず、対症療法に限定されている。これまでに幹細胞や遺伝子導入を用いた再生療法に関する研究が行われてきた。これに対し、我々は放射線防護に焦点を当て、照射後に生じる組織の形態学的、機能的変化を解析することで、放射線障害に対する新たな予防法を確立するための知見を得ることを目的としている。これまでに唾液腺における放射線照射に伴う組織障害の発生機序について、「照射後の数日以内に生じる機能的変化」および「照射後数か月における器質的損傷と機能変化」に関する検証を行った。照射後2日以内の短期効果として「唾液分泌量の低下」、「腺房細胞の一過性の表現型の消失」、「機能分子の発現変化」および「微細構造の変化」についての報告を行った。一方で、細胞死に係る明らかな証拠を認めなかったことから、短期的な影響は主に機能に障害を呈するものと考え、詳細な解析を実施中である。また、長期的には腺房細胞と導管細胞の消失を認めたことから、時間経過に伴う構造の変遷についても検討を行う予定である。本発表では、これまでに得られた知見を報告するとともに、課題と今後の展望について述べる予定である。
【利益相反】著者は利益相反がないことを宣言する。