第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

アップデートシンポジウム6

「唾液腺の機能維持を巡る障害と再生の拮抗」

2023年9月17日(日) 14:20 〜 15:50 C会場 (133講義室(本館3F))

座長:天野 修(明海大 歯 組織)、吉垣 純子(日大松戸歯 生理)

14:40 〜 15:00

[US6-02] 組織傷害が誘導する唾液腺の再生促進因子の検索

〇吉垣 純子1、横山 愛1、戸田 みゆき1、加藤 治1 (1. 日大松戸歯 生理)

キーワード:唾液腺、再生、BMP-2

唾液腺は組織傷害を受けると,腺房細胞が萎縮・減少し導管が増加する。しかし,傷害を与えた原因が取り除かれると,2週間程度で再び腺房細胞が増加し唾液分泌能も回復する。このことから,唾液腺では組織傷害に応答して再生を促すプログラムが起動することが予想されている。我々はマウス耳下腺の主導管結紮とその開放過程を,唾液腺障害-回復モデルとして解析を行ってきた。導管結紮から1週間後に腺房細胞の萎縮が観察されるが,そのときにすでに細胞増殖マーカーであるKi67陽性細胞が増加している。したがって,傷害を受けて腺房細胞が失われている段階ですでに回復への準備が始まっていると考えた。そこで,導管結紮1週間後の唾液腺から唾液腺再生促進因子の検索を行った。いくつかのサイトカインの発現が上昇していることを見いだしたが,その1つであるBMP-2について耳下腺初代培養細胞における機能を解析した。耳下腺から単離した腺房細胞の培養時にBMP-2を添加したところ,対照と比較して細胞増殖速度が上昇した。上皮細胞マーカーであるE-cadherinやclaudin-3は対照と同程度に発現しており間葉系マーカーであるvimentinの発現はみられなかった。したがって,BMP-2は少なくとも上皮細胞の増殖を促進しているといえる。一方,導管マーカーであるclaudin-4の発現が増加していた。claudin-4は正常組織では導管特異的に発現しているが,組織傷害により腺房細胞由来細胞でも発現することを我々は報告している。BMP-2は腺房細胞の導管様細胞への変化を誘導することで,ストレス回避と組織再生を助けている可能性がある。
【利益相反】著者は利益相反がないことを宣言する。