第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

アップデートシンポジウム6

「唾液腺の機能維持を巡る障害と再生の拮抗」

2023年9月17日(日) 14:20 〜 15:50 C会場 (133講義室(本館3F))

座長:天野 修(明海大 歯 組織)、吉垣 純子(日大松戸歯 生理)

15:00 〜 15:20

[US6-03] ソフトフード摂取が唾液腺に及ぼす影響

〇髙橋 茂1 (1. 北大 院歯 口腔機能解剖)

キーワード:唾液腺、ソフトフード、萎縮

現代人の食生活の特徴として軟らかい食べ物いわゆるソフトフードを好む傾向が挙げられる。このような食習慣は口腔領域へ悪い影響を及ぼすのではないかという懸念から、ソフトフードで飼育した動物の顎骨、咀嚼筋、顎関節などがこれまで研究されてきた。演者らは液状飼料で飼育したラットの唾液腺に注目し、組織学的検索を行ってきた。 液状飼料飼育されたラットの耳下腺は萎縮し、その重量は減少した。組織学的には導管細胞に大きな変化は認められなかったが、腺房細胞は縮小していた。このような耳下腺では、細胞増殖マーカーである5-bromo-2’-deoxyuridine(BrdU)に陽性を示す腺房細胞は減少する一方、アポトーシスマーカーであるcleaved-caspase-3に陽性を示す腺房細胞は増加した。以上の所見より、液状飼料飼育による耳下腺の萎縮は腺房細胞の縮小と細胞数の減少によって引き起こされていることが示唆された。これに対して顎下腺や舌下腺の重量は減少せず、組織学的にも腺房細胞に大きな変化は認められなかった。したがって、液状飼料飼育に対する反応は唾液腺の種類によって異なることが明らかとなった。次に、液状飼料飼育により萎縮した耳下腺が固形飼料飼育に変更すると回復するのかについて検討した。耳下腺の重量は飼料変更後増加に転じ、7日後には正常重量まで回復した。組織学的には縮小していた腺房細胞は徐々に大きさを回復させ、7日後には正常サイズまで回復した。BrdU陽性腺房細胞は飼料変更直後より増加していた。これらより萎縮耳下腺は飼料変更により旺盛な回復力を示すことが明らかとなった。 本シンポジウムではさらに成長期におけるソフトフード摂取が唾液腺の発育に与える影響についても取り上げたいと考えている。 開示すべき利益相反状態はありません。