第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

アップデートシンポジウム6

「唾液腺の機能維持を巡る障害と再生の拮抗」

2023年9月17日(日) 14:20 〜 15:50 C会場 (133講義室(本館3F))

座長:天野 修(明海大 歯 組織)、吉垣 純子(日大松戸歯 生理)

15:20 〜 15:40

[US6-04] 唾液腺筋上皮細胞の分布と形態の機能的意義

〇天野 修1、小野澤 豪3、平良 芙蓉子3、長坂 新1、坂東 康彦1、鈴木 海人1、﨑山 浩司2 (1. 明海大 歯 組織、2. 明海大 歯 解剖、3. 明海大 歯 口腔顎顔面外科)

キーワード:筋上皮細胞、唾液腺、組織化学

外分泌腺の多くには収縮能を有する筋上皮細胞が存在し、腺房を覆っている。ヒトや齧歯類の唾液腺では、筋上皮細胞は腺房と介在部導管に局在して唾液分泌を補助していると考えられている。
 ラット大唾液腺では、筋上皮細胞は純漿液性の耳下腺の腺房に存在せず、介在部導管のみに存在する。また漿液性が比較的強い顎下腺の腺房では、筋上皮細胞の突起は細長く、分岐も多いのに対し、粘液性の強い舌下腺では突起は短く、太く、分岐も少ない。このような形態的相違は唾液の性状と強く関連している。また突起の形態は、顎下腺で片側切除または部分切除後に、対側の正常腺組織でも変化するので、筋上皮細胞の形態は機能的状態を反映している。純漿液腺であるエブネル腺は、耳下腺と異なり非常に発達した、顎下腺の類似の筋上皮細胞が腺房を覆い、介在部導管には縦走に加えて輪走する突起が認められる。このような特徴は強く間歇性の分泌を誘導し、導管開口部である有郭乳頭の味蕾を洗浄するのに寄与すると考えられる。介在部導管では筋上皮細胞を取り巻くように線維芽細胞が密集・密着し、あたかも鞘の様な構造物を形成している。我々は介在部導管周囲鞘と呼んでいるが、同構造は収縮による導管の回復や、導管分岐部での唾液合流による導管の保護に関与していると考えている。
 本シンポジウムでは筋上皮細胞の形態変化からその機能的意義を考察した一連の研究について講演する。