The 65th Annual Meeting of Japanese Association for Oral Biology

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Symposium

US8

「歯科臨床と基礎研究を繋ぐ口腔粘膜研究の最前線」
 スポンサー:第一三共ヘルスケア株式会社

Sun. Sep 17, 2023 4:00 PM - 5:30 PM C会場 (133講義室)

座長:小野 堅太郎(九歯大 生理)、加藤 隆史(阪大 院歯 口腔生理)

4:20 PM - 4:40 PM

[US8-02] Temperature sensitive TRP channels and oral epithelial regeneration

〇Mizuho A Kido1, Reiko Yoshimoto1 (1. Dept Anat Physiol, Fac Med, Saga Univ)

Keywords:口腔粘膜、上皮、再生

口腔は、飲食物や咀嚼、歯ブラシなどによる多様な機械的あるいは化学的刺激、大きな温度変化に常にさらされている。その表面を隈なく覆う口腔粘膜が、それらの刺激を適切に感受し、刺激に抗することのできる形態を形成することで、飲食や発話などの行動が可能になっている。私たちは、これら口腔粘膜のしなやかな機能に着目し、なかでも上皮と感覚機能について取り組んできた。口腔上皮は、部位により構造や物性が異なるが未だその意義やメカニズムはわかっていない。Transient recepotor potential channel (TRP) チャネルファミリーは多様な刺激受容に関わる非選択的陽イオンチャネルであり、その多彩な生理機能と病態への関与から2021年のノーベル医学生理学賞の対象となった分子である。私たちはTRPチャネル発見当初より、口腔上皮感覚へのTRPチャネルの機能について調べてきた。そして、口腔上皮に温度感受性のTRPチャネル群が発現していること、口腔上皮細胞の温度応答に温かい温度で活性化するTRPV3, TRPV4、熱い温度で活性化するTRPV1が関わっていることを報告してきた。口腔は多様な刺激により傷を受けやすいが、速やかに治癒することが知られている。そこで、わたしたちはマウスの重層扁平上皮の創傷治癒のモデルとして、臼歯の抜歯あるいは口蓋粘膜のパンチモデルを用い、生理的な温度範囲で活性化しているTRPチャネルが果たす役割を細胞生物学的に明らかにしている。上皮による生体防御には、細胞間の接着や細胞移動、細胞増殖が重要な役割を果たす。TRPチャネルファミリーは、そうした細胞の挙動を調節することで、創傷治癒にも関わることがわかってきている。それらの成果を通して、口腔上皮の特徴や生理的な意義、病態との関連を議論できれば幸いである。