一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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市民公開シンポジウム

幼小児期・若年期からの生活習慣病予防

コーディネーター:八谷寛(名古屋大学大学院医学系研究科国際保健医療学・公衆衛生学),佐藤祐造(名古屋大学名誉教授,前愛知みずほ大学学長)

キーワード:生活習慣病 学校における健康教育 

シンポジウム企画の意図
 生活習慣病は,脳卒中や心筋梗塞,糖尿病など,いったん発症すると治癒が困難で,寿命を短縮したり,生活の質を低下させる重大な疾患群と言える.顕在化するのは一般には成人期以降だが,若年期から長い時間をかけて進展することから,その原因となる生活習慣の改善や悪化防止等による一生涯を通じての予防が重要である.
 生活習慣病予防のための対策を幼小児期・若年期など,より早期から実施する必要性について,日本学術会議第24期生活習慣病対策分科会は,2020年8月に「生活習慣病予防のための良好な成育環境・生活習慣の確保に係る基盤づくりと教育の重要性」を提言し,学校における健康教育の深化を促した(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t293-3-abstract.html).
 本シンポジウムは,同提言を受け,日本学校保健学会第67回学術大会が日本学術会議・生活習慣病対策分科会とともに,関心のある学校関係者や保護者,地域の関係機関などを含む市民に広く公開して開催するもので,優れた取り組みの具体的内容を共有し,意見交換を行うことにより,今後の実践に役立てるための基盤を形成することを意図している.

 具体的には,学校における健康教育を含む保健教育に係る課題や今後の目標の概観ののちに,児童生徒の生きる力の育成に繋がる深い学びを目指した取り組み,地域の保健部門や医学・公衆衛生学分野の研究者を含む多機関が連携して実践する学校全体で健康教育を行う取り組み,などの優れた実践を共有し,児童生徒が,生涯にわたって生活の管理と健康管理の重要性を理解・認識し,行動変容と生活の質の向上に努め,生涯を通じた生活習慣病予防の実践を行えるようにすることを目指している.

 当日は,千葉大学教育学部の高橋浩之氏から『保健教育における生活習慣病予防:その内容に関する歴史的検討と国際比較』と題して,小中高保健教育における生活習慣病予防に関する現在の教育内容や歴史的変遷などをもとにした考察を通して,真の健康教育とするための問題提起を頂く.
 
 次に,東北福祉大学総合福祉学部の鎌田克信氏から『子どもの「生活とからだ」を軸にして学ぶ保健の授業:小学校での生活習慣病の授業から』と題して,発問と対話を通じた,子どもと子ども,さらに教師と子どもが共に「自分の未来を健康に生きる知恵」について創造的に学ぶ保健授業の実践について,その意義および具体的な内容の紹介を受ける.

 最後に,慶應義塾大学・筑波大学の佐田みずき氏から『小中学生を対象とした生活習慣病予防のための健康副読本教育について〜多機関が協働する,茨城県筑西市・秋田県井川町における副読本活用事業の紹介〜』と題して,市町の教育部門,保健部門(保健師,管理栄養士等),学校現場の教員,大学研究機関等が参画して地域全体,学校全体で取り組む学校における健康教育の目的,効果測定の試みについて紹介を受ける.
 
 これらの講演をもとにした意見交換を通して,幼小児期・若年期からの生活習慣病予防に資する学校における健康教育のあり方について今後の方向性を見出すことを目標としたい.