一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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新型コロナウイルス感染症3(OP-0110~0114)

宮井信行(和歌山県立医科大学)

[OP-0110] COVID-19パンデミック発出前後で中学生の生きる力Sense of Coherence(SOC)はどう変化したか―子供と母親の縦断研究 から―

大宮朋子, 坂田由美子, 高田ゆり子 (筑波大学 医学医療系)

【目的】中学生とその親(母)について,Covid-19パンデミックによる休校前後における生きる力Sense of Coherence(首尾一貫感覚;SOC)の変化を明らかにした.
【方法】関東圏の中学校2校,166組の生徒とその母親を対象に,2019年春,冬(休校前),2020年夏(学校再開後)の3回,自記式質問紙調査を実施した.
【結果・考察】全体として,2020年夏(登校を再開)の中学生のSOCは,休校前より上昇していた(40.7→42.8, p=0.006).学校再開後は友人や教師に関するストレス認知が減少しており,これは行事縮小などで人との密な関わりが減ったことに関連している可能性があった.
休校前後でのSOC上昇・維持群は99名(59.6%),下降群は67名(40.4%)だった.2群間のベースラインのSOCスコア,家族関係の良好さ,経済状況,本人の性格傾向(対人過敏)に有意差は無かったが,下降群は学校所属感覚(居場所感)が低下したままであった.SOC下降群において学校再開後の部活動でのストレス経験,異性とのトラブル,授業をキャッチアップできないなどのストレス経験認知が上昇維持群より高かった.小さなストレスの積み重ねが学校所属感覚を育めなくしている可能性がある.また,下降群において,学校再開後に母親が新たに仕事を始めていた.
【示唆】学校行事や部活動が縮小し,些細なトラブル経験や自分の居場所を感じることができない場合にSOCが低下する可能性がある.家庭の経済状況にも配慮しながら一人一人に丁寧に声をかけ,居場所感を育てていく必要がある.