一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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保健教育1(OP-0601~0604)

岩田英樹(金沢大学)

[OP-0601] 性病や性に関する学校教育の必要性に関する指標―2019年までの推移

菊地正悟 (愛知医科大学 医学部 公衆衛生学)

【目的】わが国では海外に比べ,学校で行われる性に関する教育が少ない.これには「寝た子を起こさない」ということで性に関する関心を持たないようにするという発想がある.一方,スマートフォンなどを経由して,子供達にも多くの情報と接する機会が増え,印刷物程度であった時代とは様変わりしている.14歳以下での妊娠と若年での性感染症の発生データを指標に,現状の教育で十分かについて検討する.【方法】指標は,母の年齢が14以下の出生と死産,15-29歳の5歳階級ごとの梅毒,淋病,性器クラミジアの発生状況である.厚生労働省のホームページで公表されている,人口動態統計(1995-2019年)と感染症の届け出データ(1999-2019年)の一部を抽出してグラフ化し,年次推移をみた.【成績】14歳未満の出生は,1995年から2019年まで,年間45件でほぼ横ばいである.死産(大部分が人工)を加えた(妊娠した)数は2012年の166例から年々減少しているが,わが国全体の出生数に対する割合はあまり変わらない.梅毒は,2019年は前年比減少したが,なお20-24歳女性の感染が多い.先天性梅毒は2019年23例と増加傾向であった.クラミジアは横ばいから増加に転じつつある.淋病も同様に増加に転じてきた可能性が認められた.【結論】望まない14歳以下での妊娠や,性感染症が横ばいや増加傾向にある.これらの事象の背景の検討とともに,学校で行われる性や性感染症に関する教育についての再検討が必要である.