一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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保健教育4(OP-0615~0619)

西岡伸紀(兵庫教育大学)

[OP-0616] 汎用的なリテラシーの育成における保健教育の重要性-OECDのPISA 2000~2018の分析を基に-

久保元芳1, 山口智也2 (1.宇都宮大学 共同教育学部, 2.宇都宮大学大学院 地域創生科学研究科)

近年の国内外の学校教育では,変化の激しい現代社会を生き抜くための資質・能力の育成が重視されている.そうした中でOECDは,子供たちが将来生活していく上で必要とされる汎用的な知識や技能とその活用力を,読解,数学,科学の3つのリテラシーで捉えて測定する学習到達度調査PISAを2000年より3年ごとに実施している.本報では,PISA 2000~2018の7回の調査問題(各回の予備調査を含む)の中から,日本の学習指導要領に示された教科としての保健の内容に関わる問題を抽出し,読解,数学,科学の 3つのリテラシー別での集計と整理を行った.
その結果,保健の内容と関連がある問題は,公開されている全344問中72問(21%)であり,読解リテラシーが109問中8問(7%),数学的リテラシーが98問中11問(11%),科学的リテラシーが137問中53問(39%)であった.そのうち科学的リテラシーの問題は「健康と病気」「天然資源」「環境の質」「災害」「最先端の科学とテクノロジー」の5領域を踏まえて作成されており,例えば,感染症の抑制,喫煙の害,暑熱環境への適応,浄水処理の仕組みなどについて科学的に解釈したり説明したりする問題が出題されていたことから,日本の保健の内容と親和性が高いことが示された.
OECDが重視する汎用的なリテラシー,特に科学的リテラシーの育成において,体育科・保健体育科をはじめとした教科横断的な保健教育の推進・充実が重要であることがうかがわれた.