一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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幼小児期・若年期からの生活習慣病予防

コーディネーター:八谷寛(名古屋大学大学院医学系研究科国際保健医療学・公衆衛生学),佐藤祐造(名古屋大学名誉教授,前愛知みずほ大学学長)

[OSY-1] 保健教育における生活習慣病予防-その内容に関する歴史的検討と国際比較

高橋浩之 (千葉大学教育学部)

キーワード:学校教育 保健教育 生活習慣病

はじめに
 学校における児童生徒のための保健活動は学校保健と呼ばれる.学校保健は,児童生徒に「教える」という形をとる保健教育と児童生徒の心身や環境などを「管理する」という形をとる保健管理とに分けられる.生活習慣病予防に関しては,児童生徒が生涯にわたって自分自身でより良い生活を継続する必要があるため,必然的にそのうちの保健教育が注目される.本稿では,保健教育における生活習慣病の扱いに関して歴史的検討と国際比較を行い,その今後のあり方を考える.

保健教育における生活習慣病予防に関する現在の内容
 教科としての保健教育を規定する学習指導要領は近年改訂されたばかりであり,それは小学校・中学校では実施が始まっているが,高等学校においては来年度からの実施となっている.表1に新しい学習指導要領上での生活習慣病予防の記述の特徴を整理した.

保健教育における生活習慣病予防に関する歴史的検討
 学習指導要領に「生活習慣病」という言葉が出てきたのは1999年が最初である.それまでも「成人病」という言葉は出ていたが(高等学校),それは,「集団の健康」という枠の中でわが国における疾病予防活動を学ばせるという趣旨であった.1999年からは,食事,運動など調和のとれた生活により一次予防を目指す形に変わっている.また,2018年からは健康診断やがん検診などの二次予防が学習内容に加わっている.これには実践力育成を目指す保健全体の動きがかかわっていると考えられる.

保健教育における生活習慣病予防に関する国際比較
 日本においては当たり前のように保健教育に位置付く生活習慣病予防だが,他国に目を向けると,そのようなケースは稀であることに気づかされる.他国での健康教育は,低学年が中心である場合が多いこと,保健ではなく他教科で健康を扱う場合が多いことなどが関連している可能性がある.

課題
 他国にも類を見ないわが国の学校における生活習慣病予防教育は,近年,ますます充実してきている.それは病気自体や予防方法に関する知識の普及には貢献しているであろう.しかし,それが教養教育を超えて健康教育と言えるものになっているのかに関しては今後,検証が必要だと考えられる.

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