一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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学会賞・学会奨励賞受賞講演

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学会賞・学会奨励賞受賞講演

2021年11月7日(日) 12:30 〜 13:30 LIVE配信第1会場

座長:古田真司(椙山女学園大学生活科学部教授)

[SEAL-1] 身長スパートから予測する初経発来時期:個別の成長曲線を用いて

渡邊法子1,小林正子2 (1.埼玉大学教育学部附属小学校,2.女子栄養大学栄養科学研究所)

キーワード:初経予測 身長 思春期スパート


研究の背景
 初経発来時期の予測を行う目的で,我々は先行研究において平滑化スプライン関数を用いて検討し,初経と身長スパートとの関連について,「身長スパートが早期に開始すると初経発来までが比較的短期間であり,身長スパート開始が遅い場合は,初経発来までの期間が長い」という結論を得た.すなわち身長スパートが初経発来予測の鍵となる.しかし,平滑化スプライン関数を用いての予測法は一般的ではなく解析が難しい.

目的
 本研究は,学校において身体計測値を活用することで実施できる,より簡便で一般的な初経発来の予測法を提案することを目的とした.

方法
 対象は,都内私立中高一貫校に2012 ~ 2014 年度に在籍した高校3 年生女子320 名である.身長スパート年齢を求めるために,成長曲線から求める「目視法」と,最大発育年齢を求めるために用いられる「松本の式」を応用して算出する方法の2 種類を適用した.そして,この2 つの方法から得られた結果を,平滑化スプライン関数を用いた先行研究の結果とも比較して,より良い予測法を検討した.

結果
 身長スパート開始年齢と初経年齢との相関については,目視法では相関係数は0.735 と高い正の相関が得られたが,松本の式の応用では0.134 と,有意ではあるが殆ど相関がなかった.そのため身長スパート開始年齢を求める方法としては,実際の学校現場で予測可能にするという視点からは,目視による方法が適していると考えられた.また,初経年齢で3 群に分類して検討したところ,スパート開始年齢と初経年齢との時差は,先行研究と傾向は同じであるものの3 群間で有意差はなく,2 ~ 3 年に集中していた.

結論
 学校現場において身長スパート開始から初経発来を予測するためには,成長曲線から目視法によって身長スパート開始年齢を把握し,そこから2 ~ 3 年で初経が発来すると予測する.また,身長スパートが早く開始した者は初経までがやや早く,遅く開始した者は初経までに時間がかかることも考慮する.さらに,低身長であることや身長スパート開始が早くてもロングスパートである場合は,こうした予測法には当てはまらないこともあることに留意する.そのため成長曲線を描き,個人個人の発育を追跡することが大切である.