The 67th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

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シンポジウム5
次世代につなげる歯科保健教育

コーディネーター:森田一三(日本赤十字豊田看護大学)

[SY5-2] 授業書「歯と口の健康のために~よい生活習慣を考えてみよう~」の作成と実践

吉田彩乃1, 柴田博子2, 森田一三3 (1.現愛知県半田保健所 元愛知県西尾保健所, 2.愛知県西尾保健所, 3.日本赤十字豊田看護大学)

Keywords:歯と口の健康 生活習慣 授業書

はじめに
 児童が自身の生活習慣の問題を捉え,歯と口の健康づくりに取り組める支援ツールとして「お口の花まるチェックシート(以下,チェックシート)」を作成した.学校での歯科保健に関する授業は歯みがき指導に重点が置かれ,う蝕や歯周病が生活習慣に深く関連するにも関わらず,生活習慣に関する指導は十分ではない.そこで,本チェックシートを有効に活用し,歯科医師や歯科衛生士等の専門家でなくても歯科保健に関する授業を実施できる方法を提案するため,仮説実験授業(1963年,板倉聖宣提唱)の仕組みを応用した授業書の作成をすることとした.また,チェックシート及び授業書をより効果的に活用するためのマニュアルも併せて作成した.

対象及び方法
 授業書を用いる対象者を,互いに意見を述べることが可能な小学校3年生から6年生とした.授業書及び活用マニュアルの作成については,学校歯科保健関係者ワーキング会議を開催し,西尾市歯科医師会や協力校養護教諭,西尾市教育委員会,西尾市保健センター保健師の意見を反映した.

授業書の作成
 チェックシートの項目から授業を展開する際のテーマを関係者と検討した.養護教諭から,食に関するテーマを希望する意見が多く,授業書のテーマを「むし歯になりにくい砂糖の摂取方法」及び「唾液の大切さ」とした.指導者が授業書を音読し,クイズ形式の問題の回答を児童同士が討論することで,授業が進行されるよう配慮した.また,「脱灰」「再石灰化」「歯みがき剤」などの授業書内で使う専門用語については,児童が興味を持って覚えることをねらいとし,可能な範囲で使用することとした.

授業書を活用した健康教育
 西尾市内の学齢期のう蝕対策活動に賛同した6校のうち,4校で授業書を活用した健康教育を実施した.実施場所は,多目的室や体育館よりも,討論しやすい教室が適していた.授業書はほとんどが文章で構成されており,児童には難しいかと懸念したが,健康教育実施時に楽しんでいる様子が見受けられ,実施後の感想も8割以上が「とても楽しかった」「楽しかった」と回答し,児童の反応は良好であった.3年生又は4年生に実施したが,3年生ではチェックシート裏面の目標を記入するのに手間取る者がいたので,イラストにより理解できる「お口の花まる生活習慣のポイント」を作成し,副教材として利用できるよう工夫した.

活用マニュアルの作成
 授業書を活用した健康教育の実践を通じ,対象児童の学年により授業展開や時間配分等が異なることが分かった.限られた時間の中での授業展開が求められているため,チェックシート及び授業書をさらに利用しやすくするための活用方法や授業展開例等を記載した活用マニュアルを作成した.

まとめ
 授業書を活用した健康教育は,児童が主体的に楽しく参加でき,指導者側もスムーズに進行することができた.また,児童の歯と口の健康を考えた生活習慣の見直しを行う機会となり得た.
 令和2年度はコロナ禍により,学校での歯科保健に関する健康教育の実施が減少したが,本授業書の活用は,歯みがき指導で懸念される飛沫等への不安がなく,コロナ禍での健康教育資材としても大変有効と考える.