一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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論文投稿において注意すべき統計のポイント 編集委員会からの示唆

2021年11月6日(土) 16:10 〜 17:30 LIVE配信第2会場

コーディネーター:大澤功(愛知学院大学),宮井信行(和歌山県立医科大学),鈴江毅(静岡大学)

[WS-1] 論文投稿において注意すべき統計のポイント 編集委員会からの示唆

※Live配信は、視聴可能人員は100名様までとさせていただいております。視聴をご希望の皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、後日(1週間~10日)後、オンデマンドにて視聴可能となりますので、ご了承ください。

講師:朝倉隆司 (東京学芸大学)

キーワード:統計学 論文投稿 査読

Ⅰ はじめに(本企画の趣旨)
 学会誌『学校保健研究』と『School Health』では,査読者のコメントを基に編集委員会で掲載の可否を審議している.その際に,学会員に読んでほしい内容でありながら,統計的な方法やその表記に問題があるために掲載不可となったり,審査が長期化したりする論文がある.場合によっては,査読前に掲載不可の決定をせざるを得ないこともある.研究に費やした著者らの時間と努力がなかなか実を結ばないことを,編集委員会一同はとても残念に思っている.査読者や編集委員が注意して読んでいる統計のポイントや統計に関する表記について,もう少し理解してもらえていたならば,投稿者と編集委員の時間と労力を有効に使うことができたのかもしれないし,スムーズに査読が進行したか
もしれない.
 このワークショップは,そのような編集委員会の経験から,論文投稿において注意すべき統計のポイントについて示唆ができたらよいのではないか,との趣旨から提案された.
 取りあげる話題は,論文作成の際の参考にしてもらいたく,統計方法の選び方,研究デザイン,方法の説明の記述,統計の結果の記述の仕方や作表,統計結果の解釈に関連して,査読者や編集委員会で指摘されているポイントである.統計やデータ解析の理論ではなく,取り扱い方を解説する.

Ⅱ 本企画への参加者
 このワークショップは,本学術大会の参加者で,投稿論文の作成や統計に関心がある者は,だれでも参加することができ,歓迎する.これをきっかけに統計について,あるいは量的研究について関心を持ってもらえると大変うれしい.さらに,参加者の投稿論文の質の向上に役立ててもらえると,編集委員会の本来の目的を達成することができる.
 ただし,統計の基本や各種の応用的な統計手法そのものを解説することを目的としておらず,投稿論文の作成と修正を前提とした内容について話題提供する予定である.この趣旨のもとで,参加者からの質疑や編集委員との意見交換を促進していきたい.もちろん興味本位で聴くだけであっても構わない.
 このワークショップの対象は,主に以下のような人たちである.
  ①量的データ分析を基に投稿論文,あるいは修士や博士の学位論文に取り組んでいる人で,経験が浅い人
  ②これから量的研究を行い,その成果を発表したいので,統計に関する記述のポイントを知っておきたい人
  ③これまで量的データを分析して投稿した際に,査読者からの指摘で苦労した人,採択に至らなかった人
  ④査読者や編集委員会が,量的研究の投稿論文をどのような観点で審査しているか,知りたい人
  ⑤量的研究の研究指導をしなければならないが,どのような点を注意して指導すればよいか,確認したい人
  ⑥ 査読を依頼された際に,統計の評価について迷った経験がある人.あるいは,いずれ査読を依頼される若手の候補者など

Ⅲ 注意してほしい統計のポイントの例
【背景・目的】
  ⃝ 背景・目的の記述と統計的方法の選択,理由づけ(使用した統計学的手法を選んだ理由)
  ⃝ 統計的に検証する仮説の明確化
  ⃝ 分析結果と目的,研究疑問との整合性
  素朴な疑問
   ➢ 統計ソフトで簡単に分析できるので,新しい統計方法を使う方がいいのでしょうか?
   ➢ 「検討する」ことは目的ではない,と書かれた文献がありました.なぜでしょうか?
【質問項目・測定尺度】
  ⃝ 質問項目の明示,定義の明確化
  ⃝ 測定尺度の性質と統計的方法の整合性
  ⃝ 質問項目の明示,定義の明確化 質問項目や尺度の妥当性の検討や論証
  素朴な疑問
   ➢ 自作の質問項目を使って調べたのではだめでしょうか?
【研究デザイン】
  ⃝ 研究デザインの明示
  ⃝ 研究デザインと用いる統計的方法の整合性
  素朴な疑問
   ➢  研究デザインを言葉で説明すると複雑なので,概略を書いておけば良いでしょうか? 特定のデザイン名が必要ですか?
【対象者】
  ⃝ 目的と対象者の整合性
  ⃝ 群分けの基準・サブグループ化
  素朴な疑問
   ➢ サンプルサイズが大きすぎる,または小さすぎる,と何が問題になりますか?
【統計的分析】
  ⃝ 目的,研究デザイン,仮説と整合性がある分析か
  ⃝ 結論を導くのに必要十分な分析結果か.不要な分析,不足している分析はないか
  ⃝ 適切に交絡因子がコントロールされているか
  素朴な疑問
   ➢ 無回答者は分析から除いて良いでしょうか? サンプルが減ってしまいます.
   ➢ 調査項目が多いので検定を繰り返し,有意な結果を得ました.それはだめでしょうか?
【結果の記述,作表・作図】
  ⃝ 仮説を検証する結果を示しているか
  ⃝ 結果で示すべき統計の結果か,不必要な結果(特に表)を示していないか(表示や説明)
  ⃝ 図表だけで独立して理解できるか
  ⃝ 読み取りやすい図表か(作表の原則)
  素朴な疑問
   ➢ 統計的に有意だと,良い結果と言えるのでしょうか? 有意でないと,意味がないのでしょうか?
   ➢ 結果はP 値だけでよいのでしょうか? 桁数は何桁でしょうか? 0.000の場合の表記は?
【考察】
  ⃝ バイアスは検討されているか
  素朴な疑問
   ➢ 結果の繰り返しだと指摘されたのですが,結果を示さないと書きづらいのですが・・・

Ⅴ 参加者との質疑応答
 当日オンライン参加者の質疑を募集する.日頃の疑問等について情報交換の場となることを期待している.

Ⅵ おわりに
 完璧な論文を書くのは難しい.そのために査読制度が設けられている.編集委員会は,投稿者と査読者,編集委員の間で良質な学術的対話が成立することを期待しており,学会員からの積極的な論文投稿を歓迎する.

※ ワークショップはZOOM meetingで開催します.参加方法は,大会特設サイトで案内します.