The 68th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

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教育講演3
神経発達症の理解と支援

座長:宮井 信行(和歌山県立医科大学)

[EL3] 神経発達症の理解と支援

倉澤 茂樹 (福島県立医科大学 保健科学部 作業療法学科)

Keywords:神経発達症、家族心理教育、支援

1.はじめに
正しい知識を得ることで接し方が改善し、支援方法がみえてくる。家族や教職員などに対し、専門家が教えることを「家族心理教育(或いは疾病教育)」という。本講演では代表的な神経発達症について概説し、理解することを目指す。
2.自閉スペクトラム症(ASD)
中心的な特徴は社会的コミュニケーションの欠如(人への関心が希薄など)、対人的相互反応の障害(人の気持ちが想像できないことや共感性に乏しいことなど)、限定的で反復的な行動や興味(こだわりや変化を嫌うことなど)である。脳科学においてASDの脳の器質異常や機能異常が解明されている。ASD児には「ちょっと待ってて(5分程度だからそこにいて)」といった曖昧な指示は禁物であり,写真やイラストを使うなど「視覚支援」が有効となる。
3.注意欠如・多動症(ADHD)
 ADHDは多動・衝動型(落ち着けない、我慢できない、多弁など)、不注意型(上の空、指示がはいらないなど)、混合型のサブタイプがある。「我慢」や「判断」を統制している前頭葉の機能不全が確認されている。見逃され易い症状として実行機能(段取り、行動を順序立てる能力)とワーキングメモリ―(複数の課題を同時に処理する力)の障害がある。ADHD児には「イチ、ゴミはゴミ箱。二、おもちゃはカゴの中…」など段取り・手続きを明確に伝えること,「ノートに写しているときに説明する」などの2重課題を避けることが求められる。
4.限局性学習症(SLD)
 SLDは神経発達症の中でも特に発生率が高い疾患である。大脳皮質の機能障害がサブタイプごとにあり,作業療法士や臨床心理師などの専門的な評価・介入が必要となる.学校生活では苦手意識をもたせないことが重要である。できる課題(スモールステップ)からはじめ、真面目にコツコツ学ぶことを教えていく。結果ではなく、努力やプロセスを褒めることが重要である。
5.発達性協調運動症(DCD)
DCDは近年まで診断されることが少なく、見逃されてきた疾患である。その症状は脳性麻痺などの神経疾患では説明のできない不器用さである。縄跳びや跳び箱などの粗大運動が苦手、書字や箸操作などの手指動作が稚拙など、日常生活上の様々な行為に支障をきたす。DCD児は失敗経験を重ねてしまうことが多く、自信を喪失し、二次的障害(うつ・不安、暴力的行為)を併発しやすいとの報告がある。他の神経発達症と同様に褒めて育てること、楽しい時間を共に過ごすなどの共有体験が大切となる。