The 68th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

Presentation information

教育講演

オンデマンドプログラム » 教育講演

教育講演5
子どもを性暴力の加害者・被害者にしないための予防教育のススメ言葉にならないSOSに気付き、介入する

座長:内海 みよ子(東京医療保健大学)

[EL5] 子どもを性暴力の加害者・被害者にしないための予防教育のススメ 言葉にならないSOSに気付き、介入する

小笠原 和美 (慶応義塾大学)

Keywords:性暴力、予防教育、No! Go! Tell!

はじめに
「水着を着ると隠れる部分」は大事なところ、簡単に人に見せたり触らせたりしてはいけないし、他人のも勝手に見たり触ったりしてはいけない。もし見よう、触ろうとする人がいたら、いやと言う、逃げる、大人に伝える、といった対処法を幼児期から身に付けさせることで、性暴力の被害や加害を防ぐ「生命(いのち)の安全教育」が、文部科学省によって令和3年度から提唱されている。子どもたちを性暴力の被害者、加害者にしないために、この教育をすべての子どもたちに浸透させることが重要である。

「強姦神話」の気付き
世の中には、「性暴力は被害者の側に落ち度がある」など、被害者に責任を帰す誤った偏見「強姦神話」が存在しており、誰もが陥っている可能性がある。

110年ぶりの刑法改正と積み残された課題
平成29年(2017年)に刑法が改正され、女性対象の膣性交被害だけが重罰化されていた「強姦罪」は被害者の性別の限定がなくなり、肛門性交、口腔性交も含めて「強制性交等罪」として重罰化された。「監護者性交等罪」が制定され、13歳以上18歳未満の被害者に対する性的虐待が無条件で刑法の処罰対象となった。性暴力被害当事者及び支援者は更なる改正を求めており、議論が進んでいる。

性暴力の本質
性暴力の目的は性的欲求だけではない。支配欲や依存などの様々な欲求を性という手段を通じて満たすために行われる。加害者は犯行を続けるため、大声を出したり逆らったりする相手は避ける傾向があり、そのような反応ができることが、被害の防止に繋がる可能性がある。

子どもの性被害の実態
早い場合は2、3歳頃など幼児期から性暴力被害が始まっている。加害者は、幼い相手に、「どこのおうちでもやっていること」「体にいいこと」などと騙して犯行に及んでいる。特に「普段からその人の言うことを聞くのが当たり前」という関係性の中では、被害が長期間続くケースが見られる。

予防教育の重要性
誰が子どもを性的対象として見ているかは傍からは分からないため、初発の犯行を防ぐことは難しい。だからこそ、いざという時の抵抗力を高めるため、「NO!(いやと言う)」「GO!(その場から逃げる)」の教育が重要。被害が起きてしまった場合は、加害者を隔離することで被害の拡大を防ぐため、「TELL!(相談する)」の教育が重要。あわせて、「たとえ被害に遭ったとしても、自分を責める必要はない」ということを予め伝えておくことで、「自責の念」を薄められる可能性がある。