The 68th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

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大会長講演

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学校保健,人生100年時代の礎

Sat. Nov 5, 2022 9:00 AM - 9:30 AM LIVE配信第1会場

座長:植田 誠治(聖心女子大学・第69回学術大会長)

[PL1] 学校保健,人生100年時代の礎

森岡 郁晴 (和歌山県立医科大学・第68回学術大会長)

Keywords:学校保健、健康教育、健康管理

はじめに
 リンダ・グラットン(Lynda Gratton)は、2016年にアンドリュー・スコットと共著で「LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略」を出版した。同書は世界的ベストセラーとなった。同書では、世界で長寿化が急激に進み、先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」が到来すると予測し、これまでとは異なる人生設計の必要性を説いている。
 これまでの人生設計は「学ぶ」「働く」「引退する(余生を過ごす)」という3つのステージが基本的であった。人生が100年に延びると考えたとき、ただ単純に長い年数を働き続けるのは過酷で消耗するため、ステージを組み替えながら自分らしい生き方を見つけていくマルチステージの人生を提案している。

マルチステージを生き抜く資産
 同書では、人生100年時代に見直しが必要となる2つの資産を挙げている。1つ目は定年後に必要な「老後資産」、2つ目は、社会の中で何かを生み出す力、心身の健康、今とは違う自分を作りあげる能力などの3つの「無形資産」である。どんなに素晴らしい能力や発想をもっていても、健康が伴わなければそれらを活用できない。そのため、3つの無形資産のうち心身の健康が最も重要であると考えている。

高齢期の健康格差と子どもの頃からの健康的な生活習慣
 日本は、高齢者の健康格差が非常に大きいことが指摘されている。高齢期に現れる健康格差は,そこに至るまでの幼い頃からの生活習慣の積み重ねや環境が影響する。子どもの頃に身に付いた生活習慣を大人になって改めることは難しい。
 「習慣は第二の天性なり」よく知られた言葉である。昨今,子ども達を取り巻く家庭では保護者が多忙であり,子どもに生活習慣の良いモデルを提示する機会が少なくなっている。一方、テレビゲームやインターネットをする時間が多くなっている。また、広告を介して健康情報があふれかえっており,必要なものだけを選び取るのも難しくなっている。

学校における健康教育の重要性
 人生100年時代を迎え,高齢になっても健康で充実した人生を送れるよう、子どもの頃から健康の考え方や関わり方,健康的な生活を身に付け,そしてそれらが習慣になるまでを支援する,学校での健康教育の重要性が,これまで以上に高まっている。
 子ども達が健やかに人生100年時代を迎えられるようにするには、学校保健に携わる方々の協力が重要である。この機会に、健康教育は何に重きを置いたらいいのか、第68回学術大会がそれを考える機会になることを願っている。