The 68th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

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シンポジウム1
人生100年時代を見据えた生活習慣の形成

Sat. Nov 5, 2022 9:35 AM - 11:05 AM LIVE配信第1会場

座長:川畑 徹朗(神戸大学)

[SY1-3] 家庭・学校・地域における「生きる力」に向けた社会情動的スキルの育成 ソーシャル・エモーショナル・ラーニングの切り口から

渡辺 弥生 (法政大学)

Keywords:生涯発達、社会情動的スキル、生きる力

はじめに
 近年、子どもたちの社会情動的な発達を促進させることの重要性に対して多くの関心が向けられている。経済協力開発機構(OECD)による社会情動的スキルに関する報告書によれば 、思いやり、粘り強さ、感情のコントロールなど社会情動的スキルこそが教育や仕事、人間観、さらには健康を含め多くのことに影響を与えるとまとめられている。こうしたスキルを幼少期から育て、発達に応じて人とつながり、自己調整のスキルを身につけることが可能になると、児童期以降の学力の成果を高め、メンタルヘルスにおいても問題行動が予防され、長期的にその後の人生に良い結果のもたらされることが示唆されている。いわば、「生きる力」を育むことにつながると考えられる。

国際的に目指されている取り組み
OECDで話し合われているEDUCATION 2030が目指している頃は、VUCAの時代になると考えられている。VUCAとは,Volatile、Uncertain、Complex、Ambiguousの頭文字をとった言葉であるが,「予測困難」「不確実」「複雑」「曖昧」な世の中が予測されるということを意味する。これだけ目まぐるしく科学的な技術が進化するとともに、人間の予測を超えるような状況が重なると、目標となること自体が変わってしまうことも考えられる。しかし、そのベースには、常に発達的基盤に応じた学びを考えなければならない。こうした視点を共有しながら、教育の現場で普及されているプロセスとしてソーシャルエモーショナルラーニング(SEL)というフレームワークがあるので紹介したい。

ソーシャル・エモーショナル・ラーニング
このSELはすでに欧米やアジアにも普及しつつある。生徒の社会性や感情のスキルを高める家庭・学校・地域への介入の効果に関する研究や実践が報告されている。紹介されているプログラムは、魅力的なツールや構造を持ち、向社会的行動を増やし、問題行動を減らし学業を向上させているとその成果を報告している。SELの普及の背景には、学校においてこれまで記憶や分析といった知能や認知の育成に重きを置きすぎていたことへの反省がある。学びの前提に、やる気や、協調性など社会情動的スキルが重視されるようになってきているのである。

ウエルビーングを目指してラーニングコンパスを持つ
こうした社会情動的なスキルは、非認知能力とも考えられ、人がウエルビーングという山を目指し、学習者としてのラーニングコンパスを獲得する上でも重要であると取り上げられている。日本でもこうした社会性や感情面の育成にどのような教育が必要であるか、さまざまな実践が試みられてきており、成果も発表されている。本シンポジウムでは、子どもの心の発達において課題となる実態を指摘し、このSELをどのように家庭、学校、地域のビジョンとして共有できるか、また、協力して支援や教育を推進していけるかについて考えたい。実際に導入されている研究や実践を紹介しつつ、生涯発達においてどのような取り組みが可能か、できるだけ具体的に提案したいと考える。