国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

災害・支援・経済発展——バングラデシュの事例

2024年11月10日(日) 12:45 〜 14:45 F304 (富士見坂校舎 304)

座長: 南出 和余(神戸女学院大学)

コメンテーター: 南出 和余(神戸女学院大学), 狩野 剛(金沢工業大学)

13:15 〜 13:45

[2D206] バングラデシュ南西沿岸部の給水施設に関する適正技術的視点からの試論的考察

*山田 翔太1,2 (1. 立教大学 異文化コミュニケーション学部、2. 日本学術振興会特別研究員(PD))

キーワード:飲料水、地域適合性、持続可能性、水質と水量、塩害

バングラデシュ南西沿岸部は塩害の影響で飲料水問題が深刻であり、現在までに多様な給水施設が援助機関や住民により設置されてきた。しかし、先行研究ではこれらの給水施設に関する適正技術的視点からの分析は限定的であった。そこで、本研究では、同地域で2015年から断続的に行っている現地調査の結果を用いて、設置された給水施設の技術的妥当性とその向上に必要な方策の検討を目的とした。 同地域では、援助機関が無償もしくは販売で雨水貯水タンク(RWNH)を提供していたが、販売の場合は貧困層が排除される傾向にあった。また、市場で販売されているRWHTを中間層以上の世帯が自費で購入する事例もあった。しかし、住民はRWHTのみでは年間に必要な飲料水を確保できていなった。援助機関により設置される池水砂層濾過装置(PSF)は共同管理を必要とするが、この点に問題が生じて放棄される事例が散見された。住民は濾過装置が付帯するPSFを安全な飲料水源と認識していたが、簡易水質調査から水質に問題があることが判明した。地下水逆浸透膜ろ過装置(RO装置)は管理者が利用者に水を販売する給水施設として、近年に援助機関や個人により設置され、設置数と利用者数が増加傾向にあった。利用者はRO装置の水質や利便性を高く評価していたが、濾過過程で発生する濃縮水が未処理で環境中に排出される問題が確認された。浅井戸は個人が自宅に設置する傾向にあったが、水中に塩味を感じる場合は利用されていなかった。深井戸は援助機関が公共の給水施設として設置するが、浅井戸と同様に水中に水中に塩味を感じる場合は利用されていなかった。以上から、同地域で設置される給水施設は、維持管理に関する地域適合性、環境の持続可能性、給水量および水質のいずれで不足や問題点があることが明らかとなった。農村部における飲料水供給に関する制度の充実と、給水施設を組み合わせた飲料水供給が不可欠であると言える。

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