国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

農業の国際開発:水田、桃栽培、花き栽培、シードコモンズ

2024年11月10日(日) 15:00 〜 17:00 F304 (富士見坂校舎 304)

座長: 西川 芳昭(龍谷大学)

コメンテーター: 西川 芳昭(龍谷大学), 杉原 たまえ(東京農業大学)

15:30 〜 16:00

[2D210] シードコモンズのタネの文化多様性保存について考察
:農民の集団的責任、管理によるタネの図書館の特徴

*丁 利憲1 (1. 龍谷大学)

キーワード:シードコモンズ、タネの図書館、文化多様性保存

シードコモンズとは、タネをコミュニティ全体で共有し、共同で管理するシステムであり、(1)共同責任、(2)私有化からの保護、(3)種子および品種の多中心的な管理、(4)育種、種子管理、栽培および使用に関する知識と実践的なスキルの共有という4つの特徴を持つ(Sievers-Glotzbach et al. 2020)。 
 シードコモンズは単にタネの保存や交換を行うだけでなく、コミュニティが共有する知識、価値観、慣習を通じて、新たな文化や社会的結びつきを創出する役割を担っている。これにより、地域社会や農業コミュニティの持続可能な発展を支える基盤となっている(Michel P. Pimbert 2021)。特に、(4)の育種、種子管理、栽培および使用に関する知識とスキルの共有に関わる取り組みが増加しており、タネの文化と知識を保存・共有することが生産者の権利として認識されている。
 本研究では、シードコモンズの文化多様性保存に焦点を当て,韓国初のタネの図書館である洪城タネの図書館を対象とし、その特徴やタネの意味、タネ保存とタネの文化的記憶の保存活動を関係者に対する聞き取り調査により明らかにした。洪城タネの図書館は、タネの囲い込みに対抗より、むしろタネの文化的情報と農業知識が受け継がれないことへの懸念から、タネの文化的記憶を収集し共有することに注力しており、タネの価値を再認識する活動を展開している。この図書館の活動の一つである「シアッマシル」では、地域の高齢者から得たタネとその文化的記憶を収集・展示し、シードバンクとして保存する取り組みが行われている。 
 このように洪城タネの図書館は地域のシードコモンズとして重要な役割を果たし、地域社会の結びつきを強化し、持続可能なコミュニティの形成に貢献している。今後、タネの文化的価値の創出が期待され、タネの生物学的および文化的多様性との関係性が強調される中で、新しい食料主権意識が芽生える可能性があると評価する。

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