第55回日本脈管学会総会

講演情報

JCAA選考発表

JCAA選考発表

2014年10月30日(木) 09:00 〜 10:40 第4会場 (203会議室)

座長: 大倉宏之(川崎医科大学 循環器内科), 遠藤將光(独立行政法人国立病院機構 金沢医療センター 心臓血管外科), 濱野公一(山口大学大学院 器官病態外科), 陣崎雅弘(慶應義塾大学医学部 放射線科学)

09:00 〜 10:40

[JCAA-1] 二次元大動脈瘤モデルを用いた構造解析による嚢状瘤の定義:胸部大動脈瘤症例の拡張速度でみた理論値の妥当性

赤井隆文1, 保科克行1, 木村賢1, 牧野能久1, 根元洋光1, 白須拓郎1, 芳賀真1, 望月康晃1, 松倉満1, 谷口良輔1, 西山綾子1, 橋本拓也1, 宮原拓也1, 重松邦広1, 白石弥生2, 山本創太2, 山内治雄3, 小野稔3, 渡邉聡明1 (1.東京大学医学部附属病院 血管外科, 2.芝浦工業大学 生体機能工学研究室, 3.東京大学医学部附属病院 心臓外科)

キーワード:structural analysis, saccular aneurysm

【目的】大動脈の嚢状瘤の定義は未だ明確なものは存在しない。瘤径はわかりやすい破裂予知のパラメータだが,いわゆる手術適応未満の瘤径の嚢状形状に出会った場合,その手術適応について悩むことがある。我々は二次元の瘤モデルを作成し,その構造解析により嚢状瘤の定義付けを試みた。また,その妥当性を胸部大動脈瘤症例をベースに検討した。【方法】動脈瘤モデルは,正常大動脈に見立てた径2cm幅の領域から突出する,瘤の仮想楕円を変形させたものとした。接合部は曲線を描画した(Filleting)。応力の分布は,構造解析ソフトLS-DYNAを用いて行った。臨床データは2002年1月から2013年9月の間,当院心臓外科にて入院精査された胸部大動脈瘤症例の内,拡張速度を追跡しえた81例を用いた。また,3検者により定義の検者間信頼性を検討した。【結果】仮想楕円の縦横径を変化させていくと,(1)楕円の形状が縦長から横長に変わる(円形になる)ところで最大主応力の変曲点が存在した(横長嚢状瘤)。その応力分布表から(2)縦長でfillet半径が小さいものでも,ある数式条件を満たすものに応力が高いものが存在した(縦長嚢状瘤)。臨床データでは横長嚢状瘤27例,縦長嚢状瘤4例,その他50例であった。3群間に背景疾患,最大径に有為差は認められず,拡張速度はそれぞれ7.45±5.13/3.66±2.47/4.17±2.67(mm/年,P = .002)と横長嚢状瘤において有意に大きかった。瘤の楕円形状が横長のものを嚢状瘤とした場合において検者間の一致率,κ係数の平均は89.3%,0.754であった。【結語】瘤モデルの理論値と臨床データのすりあわせの結果,瘤突出部の仮想楕円が横長のもの"が嚢状瘤の定義として最も妥当性が高いと思われた。"