第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(口述)

基礎研究

2014年10月30日(木) 10:40 〜 11:20 第4会場 (203会議室)

座長: 森下竜一(大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学)

10:40 〜 11:20

[O-1-5] ヒト大動脈外膜の血管・リンパ管の分布

佐野真規, 海野直樹, 山本尚人, 犬塚和徳, 田中宏樹, 斉藤貴明, 杉澤良太, 片橋一人 (浜松医科大学 血管外科)

キーワード:vasa vasorum, lymphatic vasa vasorum

【背景】動脈硬化性疾患における内膜の変化は重要である。一方で近年,動脈硬化性疾患における外膜の役割も注目されている。大動脈外膜には血管が存在し,血管壁へ酸素や栄養を供給している。外膜血管の狭窄は血管壁の低酸素を引き起こし,動脈硬化性疾患に関与する。一方で,大動脈外膜にはリンパ管も存在し,血管壁の炎症細胞やリポ蛋白のドレナージに関与する。外膜リンパ管の機能障害は炎症細胞やリポ蛋白の停滞を引き起こす。しかし,ヒト大動脈外膜の血管・リンパ管の解剖学的な分布についてこれまで検討されていない。【方法】当院にて施行された病理解剖検体(30例)を対象とし,大動脈各部位(弓部,胸部下行,腎動脈上,腎動脈下)の血管壁を採取した。エラスチカ・ワンギーソン染色と免疫染色(von Willebrand因子,Podoplanin)を施行した。顕微鏡観察にて内膜厚,中膜厚,外膜血管数,リンパ管数をそれぞれ測定し,各部位における外膜血管・リンパ管の分布ついて検討した。【結果】内膜は腎動脈下腹部大動脈で最も肥厚していた。中膜は弓部で最も厚く腎動脈下で最も薄かった。また外膜血管数も弓部で最も多く,腎動脈下で最も少なかった。中膜厚と外膜血管数には相関関係を認めた。一方で,外膜リンパ管は腎動脈下腹部や弓部に発達しており,内膜や中膜厚との相関関係は認められなかった。【考察】外膜血管は血管壁の栄養に関与し,血管壁が厚い部位では外膜血管も多い。一方で,外膜リンパ管は血管壁の厚さとは相関せず,腎動脈下腹部や弓部など,部位特異的に多く存在した。外膜リンパ管の発達した部位は動脈硬化性疾患の好発部位でもあり,両者の関係について,今後さらなる検討が必要である。