第55回日本脈管学会総会

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一般演題(口述)

感染その他

Thu. Oct 30, 2014 5:30 PM - 6:10 PM 第5会場 (201会議室)

座長: 四方裕夫(金沢医科大学 胸部心臓血管外科)

5:30 PM - 6:10 PM

[O-17-5] 大動脈瘤の破裂予測:生理圧範囲の変形挙動から破裂圧力を予測できるか?

杉田修啓1, 松川瞬2, 長山和亮3, 松本健郎1 (1.名古屋工業大学 機械工学科, 2.名古屋工業大学 産業戦略工学専攻, 3.茨城大学 知能システム工学科)

Keywords:Rat aneurysm model, Rupture risk estimation

大動脈瘤は瘤径が小さくとも破裂する場合が報告されており,より信頼性のある破裂予測が必要である。瘤径が小さい場合血管壁への負荷力は小さく,瘤壁の脆弱化が考えられる。これまでに我々は,加圧時の力学特性から得た“硬さ降伏パラメータ”が破裂圧力と有意に相関する,即ち破裂圧力が硬さ降伏パラメータから推定できる結果を得てきた。しかし,生体内とは異なる力学負荷法(バルジ試験)で,また0-1000 mmHg以上と広範囲加圧時にこの結果を得ており,生理状態への適用可否が不明であった。そこで,本研究では生体内と同様に円筒状血管に内圧を負荷し,生理圧範囲内から得た硬さ降伏パラメータと破裂圧力との関連を調べた。生体内の力学環境に近い内圧外径試験には血管壁丸ごとの試料が必要だが,ヒト大動脈瘤では入手困難であった。そこで,既報を参考にラット大動脈瘤モデルを作製した。正常群に比べ作製した大動脈瘤群では,80 mmHg内圧負荷時の外径が有意に大きく,またエラスチカワンギーソン染色によるエラスチンの面積割合が減少傾向であり,さらに引張試験による破断時の張力が小さい傾向であった。従って,脆弱化した大動脈瘤モデルの作製を確認した。次に,酸素加したクレブスヘンゼライト液中37℃で,準静的に0-250 mmHgの範囲で内圧外径試験をした。結果,正常群より大動脈瘤群で硬さ降伏パラメータが有意に減少し,全試料の硬さ降伏パラメータと破断時の張力から計算された破裂圧力が有意に相関した。この結果は0-250 mmHgのみならず,80-120mmHgの生理圧力範囲のデータでも得られており,生理圧力範囲内でも硬さ降伏パラメータから破裂圧力が推定できる可能性が示された。