第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(口述)

動脈瘤1

2014年10月31日(金) 09:00 〜 09:40 第4会場 (203会議室)

座長: 石田厚(東京慈恵会医科大学 外科学講座血管外科)

09:00 〜 09:40

[O-23-3] 脾動脈瘤に対する血管内治療を中心とした治療方針とその有用性の検討

牧野能久, 保科克行, 木村賢, 須原正光, 根元洋光, 白須拓郎, 芳賀真, 望月康晃, 松倉満, 赤井隆文, 谷口良輔, 根本卓, 西山綾子, 橋本拓弥, 宮原拓也, 重松邦広 (東京大学 血管外科)

キーワード:splenic artery aneurysm, endovascular

【背景】近年,画像診断機器の進歩により無症状でincidentalに発見される脾動脈瘤は増加傾向にある。脾動脈瘤の治療の適応および方法についてはcontroversialであり,その治療戦略の方向性が希求されている。脾動脈瘤患者の予後に関して,当科で経験した脾動脈瘤症例から治療群(開腹手術・血管内治療)と無治療群それぞれについて検討した。【対象と方法】過去22年間に当科を受診した脾動脈瘤患者60例(男性33例,女性27例)について検討した。年齢は23~81歳(平均60.1歳)で妊娠症例は認めず,有症状1例と破裂症例を2例認めた。基本的には瘤径20mm以上を治療適応,未満を経過観察とした。開腹手術7例,血管内治療18例,経過観察35例であった。周術期およびfollow期間中の経過を各治療法別にまとめ検討した。【結果】血管内治療群・開腹手術群ともに術後在院死亡や重篤な合併症,周術期の再治療を行った例は認めなかった。血管内治療群では22病日のCT再検でsegmental arterial mediolysisによる胃大網動脈瘤の新規発症を認め開腹手術を行った1例と,大腿動脈穿刺部仮性瘤を1例に認めた。術後在院期間は血管内治療群の方が短く(7.9±6.1 vs 16.9±5.9日),術後follow期間中に瘤径の再拡大や再発,瘤関連死は認めなかった。経過観察群では,平均35.3か月のfollow期間中に瘤径拡大・破裂・瘤関連死は認めなかった。【結論】経過観察群の予後から,治療適応として瘤径20mm以上を閾値とする当施設の基準は概ね問題ないと思われた。血管内治療は低侵襲性が利点として認められたものの開腹手術の成績が良好であることを考慮すると,適応は症例のリスクなどによりケースバイケースであるといわざるをえない。