第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(口述)

動脈瘤1

2014年10月31日(金) 09:00 〜 09:40 第4会場 (203会議室)

座長: 石田厚(東京慈恵会医科大学 外科学講座血管外科)

09:00 〜 09:40

[O-23-5] 心血管系IgG4関連疾患に対するステロイド治療の功罪

松本康1, 笠島里美2, 全陽3, 笠島史成1, 川上健吾1, 遠藤將光1 (1.金沢医療センター 心臓血管外科, 2.金沢医療センター 臨床検査科, 3.Institute of Liver Studies, King's College Hospital)

キーワード:IgG4, steroid therapy

【目的】IgG4関連疾患(IgG4-RD)は,IgG4陽性形質細胞浸潤,線維増生を特徴とする疾患群であり,我々はこれまで心血管系におけるIgG4-RDの存在を報告してきた。今回,治療法としての副腎皮質ステロイド使用の是非について考察したので報告する。【対象と方法】IgG4-RDに対し,ステロイドを中心とする治療を行った10症例を対象とした。いずれも動脈瘤を形成し,平均年齢68.8歳,男女比9:1,発生部位は冠動脈8例,腹部大動脈2例であった。血清IgG4値は何れも300mg/dl以上を示した。高容量ステロイド治療を冠動脈2例,腹部大動脈1例に,瘤切除および冠動脈バイパス術の施行と低用量ステロイド治療を1例に,低用量ステロイド治療のみを,その他6例にそれぞれ行い,その転機をもとに考察した。【結果】冠動脈病変は左右に多発する傾向があり,高容量ステロイド治療を行った2例では破裂による突然死を認めた。腹部大動脈の高容量ステロイド治療例でも仮性瘤を形成し,腹部ステントグラフト内挿術を施行したが,約6か月後に大動脈-十二指腸瘻で死亡した。瘤切除および冠動脈バイパス術の併施と低用量ステロイド治療を行った症例と低用量ステロイド治療のみを行った他の6症例は血清IgG4値の低下を認め生存経過観察中である。【結語】IgG4-RDに対する高容量ステロイド治療については,瘤径が比較的小さなものでも破裂頻度が高く,ステロイドによる肥厚外膜の菲薄化の可能性があり,慎重に行うべきである。IgG4-RDに対し,ステロイドを使用する際は,体格や活動性,血清IgG4値に合わせた低用量維持療法が推奨される。