第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(口述)

動脈瘤2

2014年10月31日(金) 09:40 〜 10:20 第4会場 (203会議室)

座長: 進藤俊哉(東京医科大学八王子医療センター 心臓血管外科)

09:40 〜 10:20

[O-24-4] 大動脈瘤形成における血管平滑筋細胞によるTIMP1遺伝子発現誘導

小久保博樹1, Batmunkh Bumdelger1, 鎌田諒1, 藤井雅行1, 石田隆史2, 石田万里1, 吉栖正生1 (1.広島大学大学院 心臓血管生理医学教室, 2.広島大学大学院 循環器内科)

キーワード:Abdominal Aortic Aneurysms, TIMP1

腹部大動脈瘤(AAA)は,Matrix metalloproteinases(MMPs)の活性化による血管中膜の弾性線維の崩壊によって生じる疾患である。MMPsの活性はTissue inhibitor of MMPs(TIMPs)によって阻害されるため,MMPsとTIMPsの活性のバランスが,血管壁の恒常性とその破綻に関わっている可能性がある。しかしながら,動脈瘤形成におけるTIMPsの役割については,よく知られていない。今回我々は,マウスを用いたAAAモデル系で,MMP9に加えてTIMP1が,大動脈の中膜層で活性化されるか否かを検討した。まず,CaCl2法によりAAAを誘導した大動脈組織でTIMP1 mRNAの発現が上昇することを明らかにした。次に,血管平滑筋細胞(SMCs)培養系において,炎症性サイトカインであるTNF-αが,MMP9およびTIMP1を活性化し,その活性化がJNK抑制剤(SP600125)によって濃度依存的に阻害されることが明らかとなった。これに対し,NF-kB経路を抑制かつc-Jun/AP-1経路を活性化するプロテアソーム抑制剤(MG132)では,TNF-αによって誘発されたTIMP1の発現上昇を阻害したのに対し,MMP9の発現を強く誘導する結果となった。これらの結果から,TNF-αなどの炎症性サイトカインによるMMP9とTIMP1の遺伝子発現に不均衡が生じた場合に,MMPの活性が優位となり,血管中膜の弾性線維の崩壊に結びつき,動脈瘤に至る可能性が示唆された。