第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(口述)

TEVAR2

2014年10月30日(木) 14:10 〜 14:50 第4会場 (203会議室)

座長: 安達秀雄(自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科)

14:10 〜 14:50

[O-3-1] VV-ECMOを用いてTEVARを行った難治性気胸後の胸部大動脈瘤症例

中井幹三, 山本治慎, 林田智博, 横田豊, 徳永宜之, 為季清和, 岡田正比呂 (NHO岡山医療センター心臓血管外科)

キーワード:TEVAR, ECMO

呼吸器合併症をもつ胸部大動脈瘤(TAA)症例に対して,TEVARの有効性は明らかであるが,ステントグラフト留置位置の調節や,DSA撮影のためには,全身麻酔と筋弛緩が必要と考えている。今回,高度の呼吸障害と難治性気胸の既往があるTAA症例に,全身麻酔時の気胸発症を予防するために,VV-ECMOを用いてTEVARを行い,良好な結果を得たので報告する。患者は,76歳,男性。高度の肺気腫に間質性肺炎を合併し,HOTが導入されていた。2013年9月に左側の難治性気胸を発症した。持続吸引療法などを継続したが治癒せず,外科的療法も困難なため,2013年11月に,気管支鏡下での気管支充填術を受け治癒が得られた。一方,65mm大の遠位弓部TAAも指摘されており,治療のため当科に紹介された。形態的には,Debranch TEVARで治療可能と判断したが,腸骨動脈が狭小で,開腹による腹部大動脈アプローチが必要と考えられた。術中気胸の発症を予防するため,気道内圧軽減が必要と考え,VV-ECMOを併用することとした。右大腿静脈脱血-右腋窩静脈送血でVV-ECMOを開始したが,それに伴い,人工呼吸器の条件は,PEEP 4,PC 10,RR 10から,PEEP 4,PC 8,RR 4にまで低下させることができた。TEVARの手技を終了し,閉腹後にVV-ECMOを終了した。術中気胸の発症は無く,手術室での抜管が可能であった。本症例のように,気胸の既往や高度呼吸機能障害で,通常の陽圧呼吸による全身麻酔が困難と思われる症例には,VV-ECMOの併用は有用な選択肢となると思われた。