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[O-35-4] 感染性大動脈炎における瘤形成前の早期画像変化:自然歴をたどった自験例からの考察
Keywords:infectious aortitis, infectious aortic aneurysm
【背景】大動脈感染症の治療は早期発見が鍵となるが,感染が成立した直後の“感染性大動脈炎”の時期ではなく動脈壁が破綻して瘤が形成された段階で初めて認知される場合が少なくない。提示する自験例は胸背部痛にて連日来院するも入院を拒否し続け,結果として大動脈炎から瘤への形成過程を画像的に追跡し得た症例である。【症例】67歳男性。糖尿病性腎症にて維持透析中。就寝中に突然発症した胸背部痛を主訴に当院救急外来を受診。血液検査にて白血球14,200 /μL,CRP 17.8 mg/dLと高度炎症所見あり。胸部CTでは大動脈弓部周囲の脂肪織肥厚と濃度上昇をみとめ,縦隔炎と暫定診断し入院をすすめるも拒否。しかしながら翌日も同様の症状で来院し,大動脈弓部に隣接する脂肪織はさらに腫脹し混濁も増強。第5病日の来院時には混濁した脂肪織内にはじめて嚢状瘤の突出を確認し,第2病日に採取した血液培養からMRSAを検出。感染性大動脈瘤の診断にて入院となり,緊急手術のため心臓血管外科施設へ搬送となった。全弓部置換術を施行され一旦退院となったが,術後4週間目に多臓器不全で死亡した。【考察・まとめ】自験例の経過は,画像的に捉えられることの少ない大動脈炎から大動脈瘤に至る自然歴そのものである。瘤にいたる前段階での疾患同定は確かに困難であるが,周囲脂肪織濃度の上昇や壁肥厚がCTにおける初期変化として現れる点は腎盂腎炎や腸炎の場合と同様である。感染性大動脈炎における周囲組織の炎症は病理病態学的に当然の変化であるが,本症の自然歴に接することがきわめて稀なためpitfallとなりうる。このような画像的特徴の認識は感染性大動脈炎・大動脈瘤の早期診断に寄与すると考える。