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[O-4-4] 高齢者腹部大動脈瘤および腸骨動脈瘤に対する治療戦略―ステントグラフトと人工血管置換術
キーワード:eldery patient, abdominal aortic aneurysm
【目的】近年,腹部大動脈瘤ステントグラフト(EVAR)により,高齢者に対する手術適応が拡大されてきた。当科では80歳以上の高齢者には,解剖学的な形態,術前状態,合併症を考慮し人工血管置換術も施行してきた。80歳以上の腹部大動脈および腸骨動脈領域動脈瘤の手術成績を検討し,当科のストラテジーの妥当性を検討した。【方法】2007年1月から2014年6月に,施行された腹部大動脈および腸骨動脈領域における破裂,CABG併施例を除く動脈瘤手術症例236例中,80歳以上の高齢者は79例であった。当科では年齢によらず解剖学的に不適当な症例や,粥腫病変の強い症例など,血管内治療による合併症のriskが高い症例に対しては全身状態が問題なければ人工血管置換術の適応を考慮する方針で術式を決定してきた。79歳以下でも開腹術の既往,術前合併症(COPDなど),併存疾患(悪性腫瘍術前など)がある場合は,EVARを選択した。80歳以上の症例の術式,手術成績を79歳以下の症例と比較検討した。【成績】80歳以上79例中,人工血管置換は15(19.0%),EVAR 64(81.0%)であった。これに対して79歳以下では,人工血管置換術は109(69.4%)と有意に多かった。手術成績は,80歳以上の症例で多発性梗塞よりMOFとなった手術死亡1(1.2%)および病院死亡3(3.8%,いずれも他院転院後,DIC1,肺炎1,不明1)で,いずれもEVAR症例であった。79歳以下は手術死亡,病院死亡ともになし。【結論】80歳以上の高齢者に対しては,EVARにより治療の適応が拡大したと考えられ,手術成績も良好であった。高齢者といえども,症例によっては必要に応じて人工血管置換術を施行する当科の方針は手術成績からは妥当であると考えられた。