第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(口述)

EVAR3

2014年10月30日(木) 16:26 〜 17:22 第4会場 (203会議室)

座長: 西村元延(鳥取大学医学部 器官再生外科学), 井元清隆(横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センター外科)

16:26 〜 17:22

[O-6-3] EVAR後に腎機能低下をきたす因子についての検討

戸谷直樹1, 百川文健1, 宿澤孝太1, 秋葉直志1, 大木隆生2 (1.東京慈恵会医科大学附属柏病院 外科, 2.東京慈恵会医科大学附属病院 外科 血管外科)

キーワード:EVAR, CKD

【はじめに】EVARは良好な治療成績と低侵襲性から多くの高齢者が治療対象になり,術前から慢性腎臓病(CKD)を有するケースが増えている。EVAR術後に腎機能を低下させる因子について検討した。【方法】過去33ヶ月間に当科で行ったEVAR 154例中,緊急例を除きかつメインデバイスを使用した135例を対象とした。術後7日目と1か月後でCKD stageを測定し,stageが進行した症例を腎機能低下症例とした。腎機能低下因子と考えられる項目を多変量解析した。【結果】平均年齢:77歳,男性:84%。術前CKD stageは,stage1:5,2:60,3a:35,3b:23,4:7,5:5例で,デバイス内訳は,Excluder:76,Endurant:49,Zenith:9,Powerlink:1例であった。全例で留置に成功した。平均手術時間:168分,出血量:212ml,造影剤使用量:161mlであった。30日死亡は0%で,周術期合併症は腎不全2例,脳梗塞1例であった。25例(19%)で腎機能の低下を認めた。特にshaggy aorta症例は17例中9例(53%)で腎機能が低下し,有意な増悪因子であった(p=0.042)。造影剤使用量はCKD増悪因子とならなかった(p=0.887)。また術後7日目のeGFRが高値であるほど1か月後のCKD stageは進行しなかった(P=0.013)。抗血小板薬やスタチンの未投与や喫煙歴,高血圧,糖尿病等はいずれも増悪因子ではなかった。【結語】Shaggy aortaの存在はEVAR術後の腎機能を低下させる。また術後7日目のeGFRが良好であればCKDの予後は良好であると考えられた。造影剤使用量はCKDの増悪因子とならないため,術前CKDの存在はEVARの適応から除外する必要はない。