5:22 PM - 6:10 PM
[O-7-5] 難治性乳糜胸に対する経皮的胸管塞栓術
Keywords:Thoracic duct embolization, Nodal lymphangiography
【はじめに】外傷性,頸部胸部術後乳糜胸は2%程度とされ頻度としては稀であるが,1000ml/日を越える大量乳糜胸であれば術後経過に悪影響を与え治療に難渋することがある。これまで治療としては,直視下結紮術,胸腔鏡下結紮術,オクトレオチド投与などが行われていたが,栄養状態不良から再開胸が困難で治療の機会を失うことも稀にある。今回我々は,局所麻酔下で超音波ガイド下に鼠径リンパ節からリンパ管造影(Nodal lymphangiography:NL)を行い透視下リンパ管塞栓(Thoracic duct embolization:TDE)を行い良好な治療成績を得た2例を経験したので報告する。【症例】症例はいずれも,食道癌術後難治性乳糜胸でドレーンからは2500ml/日の乳糜が漏出しAlbは1g/dl以下となっていた。1例目はサンドスタチン投与にも不応でああり,NLを行ったが漏出部位はわからなかった。胸管から乳び槽までコイルを用いてTDEを行ったところ術翌日から乳糜は消失した。2例目は,NLで漏出部位が同定できたが,ガイドワイヤーを挿入できず穿刺針から6倍希釈したNBCAを用いて塞栓し,術翌日から乳糜は消失した。【考察】乳糜胸に対するTDEはCopeらにより1998年に最初に報告され,2010年にItkinらにより109例の経験が報告された。Itkinらによると,TDEによる重度の合併症は一例も無くTDEは胸管結紮術の代替治療と十分なり得ると報告している。我々も,まだ2例と経験数は十分とは言えないが十分安全な治療法となりうると考えており,今後心臓,大血管,肺,食道,外傷診療に関わる診療科へTDEの啓蒙活動を行う必要があると考える。