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[P-10-6] 細胞移植血管新生療法におけるApelinの相乗効果
キーワード:apelin, angiogenesis
【目的】これまでわれわれは,重症下肢虚血患者における自家末梢血単核球(PBMNC)の細胞移植治療の研究を行い,低酸素プレコンディショニングが移植細胞の血管新生効果を向上させることを明らかにしてきた。さらなる治療効果向上のため,新生血管成熟化に注目した。今回,低酸素プレコンディショニングしたPBMNCと,血管成熟化因子であるApelinの同時投与が,相乗的な治療効果をもたらすか検証した。【方法】マウス末梢血から分離した単核球を低酸素環境下(2% 02)で24時間培養した後,マウス虚血下肢に移植した。同時にApelin-13(0.1μmol/kg)を腹腔内に7日間連続投与した。術後,下肢血流をレーザードップラーを用いて測定し,その後,虚血下肢の組織学的評価を行った。また,新生血管の機能を,Ach投与での血管拡張による血流増加率で評価することとした。【結果】治療開始28日後の血流回復率,新生血管数・血管径,血管拡張能は,低酸素プレコンディショニングを行ったPBMNCとApelin同時投与群が最も高値であった(p<0.001)。新生血管周囲の血管平滑筋密度も同時投与群で最も高値であり,血管成熟化に寄与していると考えられた。また,PBMNC自体にもApelin receptor(APJ)が発現しており,Apelinにより血管平滑筋遊走因子(HGF,TGF-β)が分泌されることが明らかとなった。これらの結果から平滑筋密度の上昇,さらには新生血管成熟化に対するApelinとPBMNCの相乗効果が示唆された。【結語】Apelin投与により,PBMNC細胞移植治療効果が相乗的に向上し,成熟化した機能的新生血管を誘導することが示された。重症下肢虚血患者に対する,有用な治療となりうる可能性が示唆された。