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[P-13-6] 大動脈弁置換術8年後に大動脈解離を発症した1例
Keywords:post AVR, DAA
症例は81歳女性。2003年秋より階段昇降で動悸,息切れが出現。2004年3月に当院初診し,心エコーにて大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(ASR),中等度僧帽弁逆流を認めた。2006年2月,階段昇降や10m程の歩行で息切れ,胸部圧迫感を自覚するようになったため,手術適応と判断され,同年4月,大動脈弁置換術(AVR)と僧帽弁交連切開術,僧帽弁形成術,弁輪縫縮術を施行した。大動脈弁は3尖で,弁尖,弁輪は高度に石灰化し,可動性無く,また僧帽弁も肥厚,一部石灰化と癒合を認めた。手術後,経過良好で自宅退院となった。その後,定期的に心エコー検査にて経過観察していた。2014年6月1日に腹痛と胸痛あったが,症状は同日消失。6月6日,かかりつけ医より定期検査の依頼あり当院受診。心エコーにて上行大動脈に解離所見を認めた。胸腹部CTにて上行部(STJ)から近位弓部までのStanford A型解離が確認され(偽腔開存,最大60mm,冠動脈,弓部分岐には解離及ばず),ICU入室。冠動脈CT,脳MRで有意所見はなかった。6月1日に胸腹部痛があったことから急性大動脈解離と診断し,弓部大動脈置換術(Hemiarch replacement)が施行された。術後は問題なく一般病棟にてリハビリをしながら現在転院の準備中である。本症例は術前の上行大動脈径が43mm,2年前は44mmであった。過去10年間に当院でAVRが施行された460例中,術後5年以上経過観察しえた90例(平均観察期間6年7か月)で,術後に大動脈解離を発症したものは本例のみであった。AVR後にStanford A型解離が発症した場合,緊急手術を前提とした安全な術前評価として,冠動脈には冠動脈CTが,大動脈解離が人工弁に波及するかの確認には心エコーが有用であった。