第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

静脈1

2014年10月31日(金) 13:10 〜 13:46 第6会場 (第1練習室)

座長: 佐久田斉(総合東京病院 血管外科)

13:10 〜 13:46

[P-15-5] 抗凝固療法中に肺塞栓症を再発したPopliteal Venous Aneurysmの一例

古島早苗1,2, 恒任章2,3, 川浪のぞみ1,2, 坂口能理子1,2, 木村由美子1,2, 浅田綾子2, 吉住敏夫2, 森内拓治1,2, 森永芳智1, 黒部昌也3, 南貴子2,3, 池田聡司3, 小出優史3, 嶋田隆志4, 三浦崇4, 谷川和好4, 山近史郎4, 前村浩二3, 江石清行4, 柳原克紀1 (1.長崎大学病院 検査部, 2.長崎大学病院 超音波センター, 3.長崎大学病院 循環器内科, 4.長崎大学病院 心臓血管外科, 5.春回会井上病院 循環器科)

キーワード:Popliteal Venous Aneurysm, pulmonary embolism

【症例】68歳男性。登山中に呼吸苦が出現後,軽度労作時の呼吸苦を認めるようになったため近医受診。SpO2が90%と低下しているため当院へ紹介され,心電図にて軽度肺性P波を認めたことから造影CTを施行,肺塞栓症(pulmonary embolism,PE)の診断となった。血栓源の検索目的に施行した下肢静脈エコーで右膝窩静脈に瘤を指摘,瘤内に血栓はなかったが強いもやもやエコーを認めたことからPEの原因として静脈瘤内血栓が疑われた。初診時すでに発症から2週間経過しバイタルサインも安定していたことから血栓溶解療法は行わず,ヘパリン,ワーファリンによる抗凝固療法を開始し,治療開始1週間で症状軽快,酸素化改善,画像上も血栓縮小を確認し退院となった。初発であったため抗凝固療法にて経過観察し,3-6か月後を目途に手術検討の方針となった。抗凝固療法が継続されたにもかかわらず,6か月後に精査目的で入院した際の下肢静脈エコーで膝窩静脈瘤内に血栓を指摘,造影CTで肺動脈内に新たな血栓が指摘されたため膝窩静脈瘤に対する手術適応と判断された。PE予防のためにIVCフィルター留置後,膝窩静脈瘤に対して静脈縫縮術が施行された。その後下肢静脈エコーで血栓の出現は認めず,静脈径も正常に戻り血流も良好である。【考察】Venous aneurysm(VA)は静脈の延長・蛇行を伴わない限局性の静脈拡張性病変と定義される。稀な疾患で,その成因は明らかにされていない。膝窩静脈に生じたものは肺塞栓症(PE)の原因となることが多く,抗凝固療法下であってもPEの再発を繰り返すことが多いと報告されている。今回の症例も抗凝固療法下でPEを再発しており,Popliteal VAは発見後早期の手術療法が必要と考えられる。