13:10 〜 13:46
[P-15-6] 下肢静脈瘤レーザー焼灼術後の肺塞栓症にて診断されたProtein S欠乏症の1例
キーワード:pulmonary embolism, endovascular laser ablation
下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術(EVLA: Endovascular laser ablation)は国内での保険収載を機に急速に症例数が増えており,手術に伴う合併症対策の重要性も増している。我々は,EVLA術後に肺塞栓症を発症し,後の精査にてprotein S欠乏症と診断した症例を経験したので報告する。症例は69歳女性。両側大伏在静脈瘤に対して入院による局所麻酔(TLA : Tumescent local anesthesia)および鎮静下での血管内レーザー焼灼術およびstab avulsion法を施行した。術当日の経過は良好であったが,翌朝トイレ歩行の際に意識消失して病室内で転倒しているところを発見された。すぐに意識は回復し,バイタルサインも安定していた。前胸部痛の訴えがあるも心電図にて虚血性変化は認めなかった。胸部から下肢の造影CT検査を施行したところ,両側肺塞栓を認めたが深部静脈血栓は認めなかった。また下肢静脈エコーにてEHIT(Endovenous heat-induced thrombosis)は認めなかった。直ちに血栓溶解療法と抗凝固療法を開始したが,2日後の下肢静脈エコーにて左SFJのEHIT 3を認めた。9日後までにCTにて肺塞栓は消失し,下肢静脈エコーにてEHITも消失したため,抗凝固療法および下腿圧迫療法継続にて退院した。1ヶ月後,検査目的に再入院して抗凝固療法を中断して血栓性素因の精査をしたところ,protein S欠乏症と判明した。EVLAにはEHITを初めとした術後血栓塞栓症のリスクがあるが,有症状の肺塞栓症の報告は稀である。術前スクリーニングによる血栓塞栓症のリスク評価には限界があるため十分な術前リスク説明と術後フォローが不可欠である。