第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

静脈4

2014年10月31日(金) 14:58 〜 15:28 第6会場 (第1練習室)

座長: 大澤晋(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科)

14:58 〜 15:28

[P-18-1] 胸腺静脈瘤の1手術例

中平敦士, 柴田利彦, 平居秀和, 細野光治, 尾藤康行, 末廣泰男, 賀来大輔, 窪田優子, 西村慎亮, 河瀬匠, 末廣茂文 (大阪市立大学 心臓血管外科)

キーワード:thymic varix, mediastinal tumor

【はじめに】胸腺静脈瘤の報告は未だみられていない。今回,前縦隔腫瘍に対し胸腺切除術を施行し,胸腺静脈瘤と診断されたので報告する。【症例】74歳,女性。咳嗽に対する精査で施行した胸部単純CTで約3cm大の前縦隔腫瘍を指摘され,半年後に約4cmと増大を認め胸腺腫が疑われた。MRI検査で腫瘤は造影効果を受けず,また息止めにより縮小・変形した。また左上肢から造影剤を静注したCT検査で,腫瘤は静脈相で静脈と同じ造影効果を示し,胸腺内の静脈瘤と考えられた。増大傾向を示す腫瘤であり,病理学的精査も含め切除の方針とした。【手術】胸骨正中頭側部分切開(右第3肋間)で前縦隔に到達した。胸腺内部に静脈瘤壁を認め,エコー検査で腕頭静脈との間に径10mmの交通孔がみられ,交通孔の血流はto and froを呈していた。腕頭静脈部分遮断下に交通部を離断し,腫瘤を含めて胸腺を摘出した。腕頭静脈切断端は連続縫合で閉鎖した。術中迅速病理検査で,腫瘤断端とリンパ節に腫瘍成分を認めず,腫瘤壁は血管壁構造を有していた。Elastica van Gieson染色で腫瘤壁は弾性板を含めた血管壁構造を有し,内皮はD2-40染色で陰性であった。術後経過は問題なく術10日目に退院となった。【考察】胸腺静脈瘤は本症例が初めての報告であり,その成因や治療適応も未だ不明である。増大傾向を認めた前縦隔腫瘤に対し,造影CTとMRI検査による詳細な画像診断で胸腺静脈瘤を強く疑うことができ,外科的切除により組織学的にも胸腺静脈瘤と確定診断することができた。