第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

動脈瘤2

2014年10月30日(木) 16:02 〜 16:32 第6会場 (第1練習室)

座長: 新見正則(帝京大学医学部医学科 臨床医学講座・診療科外科学講座)

16:02 〜 16:32

[P-2-1] 急速な拡大を認め破裂に至った総大腿動脈瘤の一例

佐藤雅信, 井上享三, 尾崎喜就, 脇田昇 (神戸労災病院)

キーワード:common femoral artery, rupture of aneurysm

症例は76歳男性。平成25年3月に右下肢閉塞性動脈硬化症・右総腸骨動脈閉塞に対してF-F bypass術,平成25年12月に右膝窩動脈急性動脈閉塞に対して自家静脈による置換術の既往あり。平成26年4月に左鼠径部痛を訴え,当院救急外来へ緊急搬送となった。来院時,左鼠径部に巨大な膨隆を認め,全体に拍動を触知した。前回の造影CT検査にて左総大腿動脈から左浅大腿動脈と左大腿深動脈の分岐にかけての瘤形成を認め,動脈瘤破裂あるいはF-F bypass術後吻合部仮性瘤破裂の可能性を考え,造影CT検査施行となった。しかし,単純CT検査施行直後にショック状態,意識レベル低下となり,緊急で手術室入室となった。【手術】左鼠径靭帯より中枢で左外腸骨動脈をテーピング,F-F bypass時のグラフトをテーピング,吻合部には血腫や膨隆を認めなかった。左外腸骨動脈とグラフトを遮断。左総大腿動脈から左浅大腿動脈と左大腿深動脈の分岐にかけて瘤化し,左浅大腿動脈瘤前壁に破裂部位を認めた。瘤を切開し,左浅大腿動脈と左大腿深動脈に瘤内からFogarty catheterを挿入しバックフローをコントロールしながら末梢側の剥離を進め,テーピング,遮断を行った。人工血管はGelweave8mmを使用,Y型に作成し右浅大腿動脈と右大腿深動脈を再建した。【術後】左下肢脈拍は触知良好で,人工血管閉塞・感染など認めることもなく経過し,退院となった。【結語】急速な拡大を認め破裂に至った総大腿動脈瘤の一例を我々は経験した。大腿動脈瘤は無症状であることが多く,破裂が初発症状となることもあると文献的に報告されている。診断後は,適切な治療時期を判断することが重要で,外科的治療を念頭においた経過観察が必要と考える。