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[P-2-3] 外傷性膝窩動脈仮性瘤術後のグラフト仮性瘤に対する血行再建の1例
キーワード:popliteal aneurysm, distal bypass
【はじめに】外傷性膝窩動脈瘤は比較的希な疾患である。今回われわれは,外傷性膝窩動脈仮性瘤術後のグラフト仮性瘤に対して再血行再建を施行した稀な1例を経験したので報告する。【症例】29歳男性。2011年3月,震災時に右下肢打撲を契機に右膝窩動脈仮性瘤を発症し,前医にて右大伏在静脈を用いた近位膝窩動脈-遠位膝窩動脈バイパス術が施行された。2012年10月右膝窩に拍動性腫瘤および疼痛が出現し,造影CTで右膝窩動脈仮性瘤と診断され,当院へ紹介入院となった。入院時,右膝窩に圧痛を伴う拍動性腫瘤を触知し,疼痛のため膝関節は屈曲進展障害があり,歩行困難であった。造影CT,血管撮影では右膝窩に5cm大の自家静脈グラフトから発生する仮性動脈瘤を認めその末梢のグラフトは閉塞していたが,下腿以下は側副血行路を介して前脛骨動脈,後脛骨動脈が造影された。入院第2病日に手術(グラフト仮性瘤空置術および左大伏在静脈を用いた右浅大腿動脈-後脛骨動脈バイパス術)を施行した。術後経過は良好であり,術後18日目 杖歩行にて退院となった。現在,術後1年6ヶ月が経過しするが,バイパスは開存し,仮性瘤は認めていない。【考察】今回われわれは,外傷を契機に発症した膝窩動脈仮性瘤術後のグラフト仮性瘤に対する稀な1例を経験した。初回手術前のCTを見返すと,下腿には静脈瘤があり,グラフトに使用された大伏在静脈は径太く,仮性瘤の成因は使用した大伏在静脈の性状に起因する合併症と考えられた。自家静脈による血行再建の遠隔成績は良好とされるが,静脈瘤を伴う場合は,その使用については慎重であるべきと考える。