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[P-21-5] 2期的に胸腹部置換と大動脈弁温存基部置換を施行した9歳Loyes-Dietz syndromeの1例
キーワード:Loyes-Dietz syndrome, aortic dissection
【緒言】Loyes-Dietz Syndrome(LDS)は2007年に報告された,TGF-β受容体の異常が原因の稀な結合織疾患である。今回9歳男児の,大動脈基部瘤に加えて急性大動脈解離 Stanford B型を合併した症例の手術例を経験したため報告する。【症例】9歳男児。1歳時に身体的特徴や画像所見からLDSの診断にて他院で経過観察となっていた。2014年定期受診の際に突然の胸背部痛を自覚し,Stanford B型急性大動脈解離の診断に加えて基部の拡大を認め当院紹介となった。来院時の画像所見でValsalva洞径が40mmに加え,3週間足らずで3mm(36から39mm)の遠位弓部解離部分の拡大を認めた。,胸腹部置換を先行させ,安定した後に基部置換の方針とした。胸腹部置換は左半側臥位にて左腋窩から臍左側部までの直切開とし,第4,5肋間開胸にて視野を確保。大腿動脈,下行大動脈送血,大腿静脈脱血にて人工心肺を確立し20℃循環停止にてReversed elephant trunkを置いての中枢側吻合に加え,左鎖骨下,肋間,腹腔,上腸間膜,左右腎動脈を再建した。術後経過良好にて1ヶ月後にRoot implantation法を用いた大動脈弁温存基部置換と弓部置換を施行した。胸骨正中切開,25℃での下半身循環停止下,順行性選択的脳分離下に中枢側吻合を行い,valsalva graftによるRoot implantation法を施行した。術後約3週間で自宅退院となった。【考察】LDSはMarfan’s syndromeに比べ,より低年齢かつ小さい大動脈径での破裂や心血管系手術を要すると報告されている。しかし9歳と若年かつ1ヶ月での胸腹部置換に加えて大動脈弁温存基部置換の報告はなく,臨床上問題となった点を,考察を踏まえて報告する。