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[P-25-1] 大動脈遮断解除後の冠動脈スパスムが原因で左室壁運動障害,人工心肺離脱困難を生じた一例
Keywords:coronary spasm, ultrasonography
【はじめに】大動脈遮断解除後の心筋の収縮障害は,長時間の心筋虚血による心筋へのダメージや,冠動脈の機械的閉塞,空気や血栓などの塞栓など,さざまな原因で発生する。今回,人工心肺からの離脱困難を表在エコーによって冠動脈スパスムが原因と診断した症例を経験したので報告する。【症例】41歳男性。重度の大動脈弁閉鎖不全症,上行大動脈の拡大(50mm)に対して上行大動脈置換+大動脈弁置換術を実施した。大動脈遮断のまま,心筋保護は選択的冠動脈注入と逆行性冠潅流の併用とした。遮断解除後,心室頻拍を繰り返し,DCを数回要した。右室の拡張は認めなかったが,左室下壁から心室中隔にかけての壁運動異常を認め,人工心肺離脱不能に陥った。表在エコーで右冠動脈の中膜から内膜にかけての肥厚による内腔の狭小化と血流低下を認め,右室枝を分岐した後の#2末梢で閉塞していた。冠動脈のスパスムと診断し,ニコランジルの投与で,冠拡張と血流の改善が得られ,同時に壁運動の改善によって人工心肺を離脱でき,経過良好で退院した。【考察】人工心肺手術の大動脈遮断解除後に心筋の収縮障害によっておこる人工心肺離脱困難への対処方法として,盲目的に人工心肺補助の継続,カテコラミン投与,冠動脈バイパス追加などが行われることが多いが,表在エコーによって冠動脈のスパスムが原因として画像診断された本症例では適切な血管拡張薬の投与で血流を改善し,人工心肺から離脱できた。術中の病態評価,対処方針の決定に表在エコーの重要性が示唆された症例であった。【結語】大動脈遮断解除後の心筋障害の一因に冠動脈スパスムがあり,その診断に表在エコーは有力な診断ツールである。