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[P-5-5] 穿刺吸引術後に急速に増大した膝窩動脈外膜嚢腫の1手術例
Keywords:adventitial cystic disease, percutaneous aspiration
【背景】膝窩動脈外膜嚢腫は稀な疾患で,動脈外膜に発生した嚢腫により動脈内腔が圧迫され下肢の虚血症状を生じる。一般的に嚢腫を含めた動脈切除および血行再建術が選択されるが,穿刺吸引術などで改善するとの報告もあり,治療法に悩むことがある。今回,膝窩動脈外膜嚢腫に対して穿刺吸引術を行ったが,早期に嚢腫が急速に増大し,再び虚血症状が出現した症例を経験したので報告する。【症例】症例は36歳の男性。突然,100m程度の歩行で右下肢痛が出現した。右ABIは0.89と低下し,CTにて右膝窩動脈背側に約2cmの嚢胞性病変を認め,膝窩動脈は圧迫されていた。同病変はMRIで,T1強調像にて筋肉とiso-intensity,T2強調像にてhigh-intensityを呈し,多房性隔壁構造を認め,膝窩動脈壁から発生していた。以上より膝窩動脈外膜嚢腫と診断し,エコーガイド下に穿刺吸引術を行った。内容物は透明で粘稠なゼリー状であり約2ml吸引できた。嚢胞は著明に縮小して膝窩動脈の拡張を認めた。穿刺後ABIは改善し,間欠性跛行も消失,術翌日に退院となった。しかし,穿刺2週間後,再び間欠性跛行が出現し,ABIも0.47と低下していた。CTにて,外膜嚢腫は約4cmと急速に増大し,膝窩動脈も一部閉塞し急速に増悪していた。そのため,嚢腫を含めた膝窩動脈切除および人工血管置換術を施行した。術後経過は良好で,術9日目に退院となった。現在,術後3ヵ月経過しているが虚血症状は認めていない。【結語】膝窩動脈外膜嚢腫に対しては,穿刺ドレナージ術などの低侵襲治療が施行されることもあるが,過去の報告からも十分な効果が得られないことが多く,外科的加療を治療の第一選択とするべきと思われた。