第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

急性動脈閉塞

2014年10月30日(木) 16:32 〜 17:08 第6会場 (第1練習室)

座長: 林田直樹(千葉県循環器病センター 心臓血管外科)

16:32 〜 17:08

[P-7-1] 下肢動脈エコーが有用であった左下肢急性動脈閉塞の1例

浪崎秀洋 (天草地域医療センター 検査部)

キーワード:AAO, ultrasonography

【症例】80歳,女性。【主訴】左下肢の疼痛,冷感。【現病歴】心房細動に対して抗凝固療法中であった。胃内視鏡検査と甲状腺生検のためワーファリンを10日間ほど休薬していたところ,夜間に左足の疼痛と冷感が出現したため当院受診となった。【既往歴】慢性心房細動,両膝全人工関節置換術。【身体所見】左足関節から足背にかけて冷感あり。左膝窩動脈および左足背動脈は触知せず。【臨床経過】造影CTを施行したところ,人工関節で両側膝窩動脈は観察できなかったが,末梢血管まで血流が確認された。しかし,臨床症状より急性動脈閉塞が否定できなかったため,ヘパリンによる抗凝固療法が開始された。翌朝施行されたABIでは左側が0.58と低下していた。下肢動脈エコーを施行したところ,血栓が左膝窩動脈内に不完全閉塞の状態で存在しており,血流は血栓の辺縁から末梢へ環流しているのが観察された。経胸壁心エコーで明らかな左房内血栓は指摘できなかったが,病歴から心原性の急性動脈閉塞が疑われた。【結果】下肢動脈エコーが診断に有用であった左下肢急性動脈閉塞の1例を経験した。【考察】本症例は病変部が不完全閉塞であったため,CTで末梢血管の造影が確認されたと考えた。急性動脈閉塞はその対応が遅れると救肢困難な場合があり,迅速な診断が必要とされる。全人工膝関節置換術後の症例において,CTで膝窩部の観察が困難な場合は,併せて積極的に血管エコーを施行し,血流評価を行うことが肝要であると考えた。