下大静脈フィルターの功罪

[PR-10-1] 当科における下大静脈フィルター留置症例の検討

^〇上田晃志郎, 田中裕也, 佐村誠, 原田剛佑, 山下修, 村上雅憲, 末廣晃太郎, 森景則保, 濱野公一 (山口大学大学院器官病態外科学(第一外科) 血管外科)

Keywords:IVC filter, Optimal filter

下大静脈(IVC)フィルターは肺血栓塞栓症(PE)の死亡率の低減に有用であるが，長期留置による合併症も存在する。留置適応はDVTのうち腸骨大腿静脈ではPE合併，浮遊血栓，術前，抗凝固禁忌，下腿静脈ではPE+浮遊血栓，浮遊血栓+抗凝固禁忌，術前のいずれかの因子を有している場合としている。今回はフィルター留置の長期成績を示し，適応およびフィルター選択(回収可能型:OF or 永久留置型:PF)の妥当性を検討した。【対象と方法】2005年から2012年までにフィルター留置した59例を対象とした。年齢:61±14歳，男性:26例であった。初回留置はOF:43例，PF:16例であり，PFは長期予後を望めない高齢者や担癌患者であった。OFは2週間後のCT検査で血栓を評価し，回収，入替，永久留置を判断した。初回OFの回収率，永久移行率，PFへの入替率を検討した。また，永久留置のOFとPFにおける遠隔期のDVT増悪・再発，PE発生，フィルター関連合併症(血栓閉塞，位置移動，傾斜，IVC穿孔)を比較検討した。【結果】初回OFの回収率33％(14/43)，永久移行率49％(21/43)，PF入替率19％(8/43)であった。永久留置例(OF 21例 vs PF 24例)におけるDVT増悪・再発(19％ vs 29％)，PE発生率(0％ vs 13％)，血栓閉塞(0％ vs 4％)に差はなかった。フィルター関連合併症は位置移動(5％ vs 0％)，傾斜(10％ vs 8％)に差はなかったが，IVC穿孔(43％ vs 8％，p=0.02)はOFで有意に高率であった。尚，PE発生やIVC穿孔は全て無症候性であった。【結語】症候性PE発生はなかった。初回にOF留置の33％は回収しており，長期予後が期待される症例へのOFの選択は妥当であった。OFでは遠隔期にIVC穿孔率が高く，永久留置とする場合はPFへの入替えが望ましいと思われた。