第55回日本脈管学会総会

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会長要望演題

下大静脈フィルターの功罪

Thu. Oct 30, 2014 3:00 PM - 3:50 PM 第3会場 (202会議室)

座長: 福田幾夫(弘前大学医学部 胸部心臓血管外科)

3:00 PM - 3:50 PM

[PR-10-2] 当院における静脈血栓塞栓症に対する下大静脈フィルターの使用変遷

松田明正, 山田典一, 荻原義人, 石倉健, 中村真潮, 伊藤正明 (三重大学大学院 循環器・腎臓内科学)

Keywords:venous thromboembolism, IVC filter

【背景】下大静脈フィルターは深部静脈血栓遊離による肺塞栓症の一次予防や肺塞栓症例における残存深部静脈血栓による再発予防を目的として使用されているが,その適応に関しては未だ議論の余地がある。【目的】当院における静脈血栓塞栓症に対する下大静脈フィルターの使用変遷より下大静脈フィルター留置の適応を検討すること。【方法】対象は2004年1月から2013年12月の10年間,当科で入院加療を行った静脈血栓塞栓症患者276例(平均年齢60±17歳,男性140例・女性136例)。フィルター留置率,適応,退院時転帰等を後向きに評価した。【結果】患者内訳は深部静脈血栓症147例,肺血栓塞栓症129例であった。2007年までは膝窩静脈より近位側の深部静脈血栓に対しては原則下大静脈フィルター留置を行っていたが,2008年以降は浮遊型の近位側深部静脈血栓,カテーテル血栓溶解療法例,亜広範型以上の肺塞栓症例で膝窩を含め近位側に残存深部静脈血栓を認める症例を適応とした。2004年から2007年までのフィルター留置率は85.3±7.8%と高率であったが,適応変更後の2008年以降は50.6±14.9%と低下した。2011年から2013年では37.7±4.2%と更に低下した。276例のうち肺塞栓症関連の死亡退院は院外心肺停止で搬送された1例のみであり,脳蘇生ができず,フィルター留置も行わなかった。また,フィルター適応変更後の2008年以降,フィルター非留置例で有症候性肺塞栓症は1例も認めなかった。【結語】近年,当院での下大静脈フィルター留置率は減少しているが,非留置例でも十分な加療下では有症状の肺塞栓症は認めなかった。今後遊離しやすい深部静脈血栓の特徴を明らかにするなどフィルター適応の確立が望まれる。