第55回日本脈管学会総会

講演情報

会長要望演題

透析患者の遠隔成績向上のための対策

2014年10月30日(木) 17:30 〜 18:20 第3会場 (202会議室)

座長: 石田敦久(社会医療法人社団十全会 心臓病センター榊原病院 外科)

17:30 〜 18:20

[PR-13-1] 透析患者の開心術における上行大動脈操作の工夫―Bad aorta症例での脳合併症の予防

宇塚武司, 安田尚美, 中村雅則, 渡辺祝安 (市立札幌病院 循環器病センター 外科)

キーワード:Bad aorta, Dialysis

【背景】慢性透析患者において上行大動脈に石灰化や粥腫を認めることは多く,そのような患者に開心術を行う場合,術中の触診ではアテローマが検出されず,Epiaortic Scan(EAS)が送血,遮断などの上行大動脈操作位置を決めるのに有用である。さらに,320列の3DCTAをもちいることで術前のプランニングが可能となった。【対象,方法】2010年4月から2014年6月までに当科で人工心肺下での開心術を受けた209例のうち術前より透析が導入されていた34例。上行大動脈の術前,術中評価と手術操作および合併症,術後成績についてretrospectiveに検討した。【結果】対象症例全例において術前造影CT,術中の触診とEASで上行大動脈の評価が行われ,Wareingらの提唱する広範な石灰化,突出する粥腫あるいは3mm以上の内膜肥厚を有するいわゆるBad Aorta症例は15例(44.1%)であった。所見に基づき腋窩動脈など上行大動脈以外の送血行ったものが12例(35.3%)であり,循環停止下に内壁を観察しながら大動脈を遮断したものが3例(8.8%)で,1例(2.9%)で低体温循環停止下上行大動脈人工血管置換を要した。周術期の脳梗塞を1例(2.9%)に認めたが,リハビリで神経学的後遺症なく退院した。平均14.5か月(0-35カ月)のフォローアップ期間内での新たな脳合併症の発生はなかった。【考察,結語】対象症例の半数近くがBad aorta患者であった。そのようなハイリスク患者群において,術前造影CTやEASでの上行大動脈評価が周術期脳合併症の予防に有用であった。低体温循環停止法を併用した直視下での上行大動脈遮断,あるいは人工血管置換は脳合併症の予防に有用なオプションと思われた。